東急「五反田駅」のホームはなぜあんなに高いのか? 都心延伸を阻んだ幻の計画、統合構想の残響とは

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都市ローカル線・池上線の五反田駅が“異様に高い”理由とは何か。全長10.9km、15駅を結ぶこの短距離路線には、未成線構想や財閥買収、幻の延伸計画など複雑な都市鉄道史が隠れている。地域密着型の交通インフラが形成された背景を、経済合理性と都市構造の視点から読み解く。

池上線が映す都市の記憶

東急池上線(画像:(C)Google)
東急池上線(画像:(C)Google)

 東急電鉄が運行する池上線は、五反田と蒲田を結ぶ全長10.9kmの都市ローカル線である。山手線の南東部から城南エリアへと延びる路線で、沿線には住宅地と商店街が点在する。全線複線、駅数は15。すべて各駅停車で、3両編成の18m車両が運行されている。

 1998(平成10)年にワンマン運転を導入し、各駅にホーム柵や停止支援装置(TASC)を整備。近年では五反田駅にホームドアを設置し、バリアフリー化も進む。所要時間は最短22分、実際の乗降を含めて約30分で全線を結ぶ。

 車両基地は雪が谷大塚駅にあり、朝夕には同駅を起点とした区間運転も行われている。かつて多かった五反田発の区間列車は、2014年のダイヤ改正で大幅に削減された。東急多摩川線には車両基地がないため、池上線経由で出入庫を兼ねた直通列車も存在し、蒲田駅でスイッチバックして多摩川駅に至る運用もある。

 駅設備には老朽化が目立ち、木造の上屋やベンチが今も使われている。一部駅では構内通路がなく、改札もホームごとに独立。トイレも片側ホームのみに設置されている。大崎広小路駅や五反田駅では鉄橋架け替えやエレベーター設置など改良が進む。

「いい街 いい電車プロジェクト」によって、多摩産材を使った駅のリニューアルも段階的に実施されてきた。戸越銀座駅、旗の台駅、長原駅に続き、2025年には千鳥町駅でも工事を開始予定。秋田県産の「あきた材」や伝統技術によるアートウォールも導入される。長らく中古の18m中型車が中心だった車両も、1993年の1000系、2007年の7000系導入を機に更新が進行中である。

 池上線は中原街道や環八通りと並走しながら、山手線内の五反田と多摩川に近い蒲田を結ぶ。沿線には生活に密着した小商圏が連なり、地域交通としての役割を静かに果たし続けている。

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