「免許返納者」急増で注目されるシニアカー 道交法上は「歩行者」扱い、理解不足が招く安全リスクとは?
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シニアカーの国内出荷台数は年間約1万5000台にのぼり、交通事故も増加傾向にある。警察庁はシニアカーを法律上「歩行者」と位置づける一方で、利用者の誤認や制度の隙間が事故を招いている。免許返納者の増加にともない、安全教育やインフラ整備の強化が急務となっている。
広がるシニアカー需要と事故リスク

2025年4月、山梨県市川三郷町で、歩道があるにもかかわらずシニアカーが車道を走行する様子が報道された。6月には熊本県小国町でも、シニアカーが突然飛び出す様子が監視カメラに記録されている。こうした事例は珍しくない。
シニアカーとは「ハンドル型電動車いす」に分類される移動補助機器で、いわゆる
・セニアカー
・電動カート
とも呼ばれる。高齢者の行動範囲を広げる手段として注目されており、介護保険制度上の「福祉用具貸与」対象にも含まれるため、利用が広がっている。
電動車いす安全普及協会の統計によれば、国内のハンドル型電動車いすの出荷台数は以下の通りである。
・2020年:1万5307台
・2021年:1万4896台
・2022年:1万4064台
・2023年:1万5543台
・2024年:1万4633台
ピーク時の2000(平成12)年には約2万9000台が出荷されている。
普及にともない事故も増加している。製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、2013~2023年の10年間でシニアカー関連の事故は52件発生し、うち死亡事故は26件、重傷事故は16件にのぼる。急勾配での転倒、横断歩道を使わずに車道を横断するなど、使い方の誤りが多く見られる。
シニアカーは法律上「歩行者扱い」となるため、免許も講習も不要で利用できる。一方で、歩行者空間と車両空間の“隙間”を移動することが制度的に許容されており、安全対策には限界がある。
今後、高齢化とともに利用者がさらに増加することを踏まえれば、適切な利用指導や交通インフラの整備、製品側の安全機能強化が不可欠となる。個人のリスク判断に頼るだけでは、社会的な事故リスクは抑えきれない。