「静かすぎる」EVの代償――最新研究が暴いた警報音トラブル、「音の死角」を考える

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EVやHVの静音性が安全課題を生む中、スウェーデン・チャルマース工科大学の最新研究が示したのは、複数台のAVAS警報音の識別困難性だ。52人の被験者を用いた実験で、同時発生する警報音の方向特定は極めて難しく、内燃機関車のエンジン音に比べ認識性が劣る実態が明らかとなった。今後は実環境で聞き分けやすい新警報音の開発と早期実用化が急務となっている。

EV接近音の識別限界

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 現実の環境でAVASの警報音は実際にどう聞こえているのか。この疑問を検証するため、チャルマース音響研究所では52人の被験者を対象に実験を実施した。場所は防音無響室で、実験は大型駐車場などの実際の状況を再現することを目的としている。

 被験者は部屋の中央に立ち、胸の高さに24台のスピーカーがリング状に配置された。そのスピーカーから、EV、HV、内燃機関車を模した3種類の車両音が、1台・2台・複数台の条件で再生された。EVとHVの警報音は、2音色構成、多音色構成、単純ノイズの3タイプに分けられた。

 再生音には静かな市街地の駐車場で録音された背景雑音を混ぜ、車両音は約7.5m離れた位置から流された。被験者は音が聞こえた方向をできるだけ速く指し示すよう求められた。

 実験の結果、3台の車両が同時に2音色の警報音を発したケースでは、音の方向を把握するのが最も困難だった。制限時間10秒以内にすべての警報音を特定できた被験者はいなかった。ミュラー氏は

「EVが内燃機関車より静かなのは歓迎すべきだが、安全性とのバランスを取ることが重要だ」

と語る。実際、EVやHVのAVAS音は識別しにくかった一方で、内燃機関車のエンジン音は被験者が容易に聞き取れたという。

 同氏によれば、内燃機関車の音は広い周波数帯域を含む短いパルスで構成され、単一周波数で構成されたAVAS音よりも人間の聴覚に入りやすい。また、この音に対する“慣れ”が認識のしやすさを後押ししている可能性もある。

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