かつてのトヨタを彷彿? ベトナム初の自動車メーカー「ビンファスト」が仕掛けるアメリカ本格進出と周到な「手土産」
EV車市場でも挑戦を続けるビンファスト

ビンファストは、北米や欧州の脱炭素社会へ向けた取り組みにいち早く目をつけた。
2035年に欧州連合(EU)のガソリン車の販売を事実上禁止する包括案が採択されたことを受け、ビンファストは早くもアメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、オランダを事業拡大へ向けたターゲットとしている。すでに、テスラ、BMW、ポルシェ、トヨタ、日産などから人材を採用したり、アメリカや世界の主要自動車メーカーと提携したりと、動き出している。
ビンファストは、EV車のデメリットのひとつである高価なバッテリーを
「リース方式」
とすることで、バッテリーと車体の価格を分け、安価にEV車を販売している。ビンファストのEV車のユーザーは、毎月バッテリーのリース料を支払う仕組みだ。
バッテリーのリース料は走行距離によって変わり、1か月の走行距離が500km以下で、VF8が35ドル、VF9が44ドルだ。走行距離の制限がない定額プランもある。バッテリーの容量が70%を下回ると無料でバッテリー交換をしてくれるため、バッテリーのメンテナンスや交換費用がかからない。この点においても、他社との差別化を図っている。
バッテリーをリース方式にすることで、安価なEV車を販売することができ、米テスラ社など、他のEV車との差別化を図りアメリカ市場へ参入していく。2023年末までには、アメリカでバッテリーレンタルポリシーを適用していく予定だ。また、VF8とVF9のどちらも先進運転支援システム(ADAS)を装備している。
今後、新進気鋭の自動車メーカーであるビンファストが、世界のEV化の流れに乗れるかどうかにも大きな注目が集まっている。
日本のトヨタから世界のトヨタになった背景には、国産車の燃費の良さと高い信頼性・実用性が世界に認められたからだ。過去のトヨタのように、ベトナムのビンファストがEV車市場において世界の自動車メーカーと肩を並べられるグローバル企業になれるかは、独自の強みを持ち世界に受け入れられるかにかかっている。今後どこまでビンファストが成長し続けられるか、同社の戦略が注目される。