東急のベトナム「まちづくり技術」を今の世知辛い日本に輸入すべき理由
世界中からモノづくり企業が集合

ベトナムのビンズン省で、東急のグループ会社・ベカメックス東急が2012年から「まちづくり」を行っている。ホーチミンやハノイは日本でも有名だが、ビンズン省はあまり知られていない。ということで、まずはビンズン省について解説する。
ビンズン省はホーチミン北部から車で1時間ほど、約30kmの場所に位置する街で、ベトナムで最も工業団地が密集している。その数は30で、海外直接投資(FDI。利潤獲得のため海外に資本を投下し事業を営むこと)が行われている企業3800社が集まる。
ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2017年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席したことで話題になったリゾート都市・ダナンよりも企業数が多く、投資額も大きいため、ベトナム第3の大都市といわれている。
2014年には巨大ツインタワーの県庁舎が完成し、3000人もの県職員が移転。県庁所在地はビンズン新都市になった。その後、世界中からモノづくり企業が集まり、日本人、韓国人、台湾人らが居住するようになった。県庁の隣にはテレビ局、銀行、東急のパートナーの国営企業・ベカメックスIDC本社も移転している。
ダイバーシティを地で行くまちづくり

東急は2012(平成24)年、ベトナム開発大手と組んで、合弁会社のベカメックス東急を設立。ビンズン新都市初のまちづくり事業として、大型マンション「ソラ・ガーデンズ」の建設を開始し、2022年3月で10周年を迎えた。
東急は、田園都市線沿線の住宅地や渋谷の都市の開発、二子玉川のまちづくりなど、さまざまなノウハウを持っている。それを生かして現在、ビンズン新都市ではすき家やファミリーマートなどの日系チェーンがあったり、東急バスが街なかを走ったりしている。コロナ禍でも、日系企業が進出するためのプラットホームとして、まちづくりが進んでいるのだ。
筆者(テリー植田、イベントプロデューサー)はソラ・ガーデンズを見て、1953(昭和28)年に開発が始まった多摩田園都市を思い出した。ただ、こちらは富裕層向けの高級住宅街のイメージがある多摩田園都市と比べて、富裕層と老若男女、多国籍が混在しており、ダイバーシティ(多様性)を地で行っている。
今後、この日本式まちづくりがビンズン新都市を経由して、日本に再度輸入されれば、新世代のダイバーシティなまちづくりのヒントになるのではないか――と考えている。