「トヨタ工場停止」は序章にすぎない──サプライチェーンを揺るがす9つのリスク! 問題はトランプ関税だけではない
VUCA時代の混乱を超える強靭性

サプライチェーンのリスクマネジメントには、もうひとつ見過ごせない難点がある。それは、関係する部門が多岐にわたることである。
例えば、調達先の分散化は調達部門が主導するが、それにともない高まるサイバーリスクへの対応にはIT部門の関与が不可欠だ。輸送手段やルートの分散化は物流部門の管理範囲である。現地生産の拡大を進めるなら、生産部門の参画も必要だ。企業リスクや経済リスクに備えるためには、経理・財務部門や販売・営業部門も巻き込む必要がある。リスクマネジメントの強化を企業価値の向上につなげるなら、IR部門の関与も求められる。
一部の日本企業はサプライチェーンマネジメント部や室を設置しているが、多くは物流管理にとどまり、調達から生産、販売までの全体を統括していない。ましてやリスクマネジメントまでカバーしている企業は非常に少ない。現実には、多くの部門が関与することを考えると、特定の組織に全てを任せるのは難しい。だからこそ、全社の経営課題として取り組むことが重要である。
VUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))の時代と呼ばれて久しいが、サプライチェーンを取り巻く状況は混沌を深めている。2020年以降だけでも、
・トランプ関税やスエズ運河の封鎖
・コロナ禍でのロックダウン
・新疆綿の不買運動
・サイバー攻撃による生産停止
など、予想外のリスクが頻発し、企業活動に大きな影響を与えている。逆にいえば、こうした混乱に柔軟に対応できる「しなやかなサプライチェーン」を構築できれば、企業の競争力を相対的に高められる。
サプライチェーンを制する者がビジネスを制する。先の見えない今だからこそ、サプライチェーンのリスクマネジメントを戦略的に強化し、持続的かつ安定的な成長を目指すべきである。