「トヨタ工場停止」は序章にすぎない──サプライチェーンを揺るがす9つのリスク! 問題はトランプ関税だけではない

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予測不能な「9種のリスク」が企業の供給網を直撃する今、問われるのは変化への対応力。関税、災害、人権、サイバー攻撃──複雑化する事業環境に対抗する鍵は、分散と連携による“しなやかなサプライチェーン”の戦略構築にある。

多様化するリスク

サイバー攻撃のイメージ(画像:Pexels)
サイバー攻撃のイメージ(画像:Pexels)

 サプライチェーンマネジメントにおいて、リスクとして認識すべき対象は関税だけではない。リスクの発生要因ごとに分類すれば、以下の九つに整理できる。

・自然災害リスク(地震、水害など)
・人為災害リスク(火災、事故など)
・企業リスク(倒産、不正・不祥事など)
・経済リスク(為替変動、インフレなど)
・政策リスク(関税、環境規制など)
・地政学リスク(紛争、テロなど)
・公衆衛生リスク(パンデミック、健康被害など)
・人権リスク(強制労働、児童労働など)
・サイバーリスク(情報漏洩、システム障害など)

このうち、「自然災害」「人為災害」「企業」「経済」の各リスクは古くから知られてきた。地震対策なら、避難訓練や耐震補強、安否確認システムの整備、保険加入といった対応が体系化されている。あとは、どこまで実行し、どれだけコストをかけるかを決めるだけだ。

「政策」「地政学」「公衆衛生」の各リスクも新しい概念ではない。ただ、近年はサプライチェーンへの影響力を強めている。トランプ関税がその一例だ。脱炭素化の社会的圧力が急速に強まれば、再生可能エネルギーの使用に加えて、CO2排出を抑えるために地産地消の推進が求められる可能性もある。

 イエメンのフーシ派による紅海での船舶攻撃は、スエズ運河の航行を妨げ、アジア~欧州間の

・リードタイムの長期化
・運賃高騰

を招いた。パナマ運河や台湾海峡でも、同様の事態が起きる可能性は否定できない。パンデミックが再発すれば、新型コロナのときのようにロックダウンが発動され、人やモノの移動に大きな制約がかかるだろう。

「人権」や「サイバー」リスクのように、これまであまり意識されてこなかった新たなリスクも存在感を増している。新疆ウイグル自治区での人権問題を受けて、新疆綿を使ったアパレル製品に不買運動が起きたことは記憶に新しい。

 2022年には、トヨタ自動車に樹脂部品を供給する小島プレス工業(愛知県豊田市)がサイバー攻撃を受け、トヨタは国内全工場の稼働を一時停止した。これらのリスクは自然災害のように施設を破壊するわけではないが、サプライチェーンへの影響は小さくない。企業が持続可能で安定した経営を目指すなら、こうした「非伝統的リスクへの対応力」を強化する必要がある。

・現地生産の拡大
・人権デューデリジェンス(企業が自らの事業活動において、人権に対する悪影響を防止・軽減・是正するために行う継続的な取り組み)
・サイバーセキュリティ対策

などを通じて、被害を未然に防ぎつつ、リスク発生時の影響を抑えること。そして、早期の業務回復を実現することが重要だ。

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