EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由

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トヨタが2025年に新たなEVを欧州市場に投入すると発表し、国内でのEV批判が収束しつつある。日本車の信頼性と技術力に対する期待が高まる中、EV市場の今後に対する消費者の関心は二分され、選択肢の不足や技術面での懸念が購入意欲を左右している。

国産EV待望論とナショナリズムの交錯

購入したいEVのメーカーに関する調査(画像:モニタス)
購入したいEVのメーカーに関する調査(画像:モニタス)

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)は長年にわたりEVの動向を追い続けてきた。その経験から、日本のEV批判派の実態は「EV批判」ではなく、むしろ

「外国車批判」

に近いと感じている。そう考えれば、今回の矛盾もつじつまが合う。

 モニタス(東京都港区)が2022年8月に公表した「電気自動車に関する調査」によると、全国の20~60代の自動車保有者を対象に実施されたインターネット調査(対象者3000人)で、今後購入したいEVのメーカー1位は「トヨタ」(29.4%)、2位が「日産」(23.4%)、3位の「テスラ」は5.7%にとどまった。このことからも、日本車に対する支持が圧倒的に高いことがわかる。国産EVを選ぶ理由としては、

「信頼・安心感がある」
「環境に優しそう」
「メーカー・ブランドが好き」
「国産だから」

といった声が上位に挙がっている。筆者がかつてさまざまな事業者にヒアリングを行った際、彼らの多くが

「国産EVが登場すれば導入を検討する」
「海外製EVはあくまでつなぎで、国産EVを待ちたい」

と回答した。国産EVへの期待は高く、業界内でも好意的な反応が目立つ。こうした現場の声からも、日本のユーザーが国産EVに強い関心を寄せていることがわかる。一方で、

・乗用車市場:テスラ
・商用車市場:BYD

といった外国製EVが急成長し、日本市場に影響を与えている。この状況に対する不満も根強く、

「日本の自動車業界がEV開発で遅れを取っている」

ことへの悔しさが、EV批判という形で表れている構図が見えてくる。いわば“自動車ナショナリズム”とも呼べるだろう。

 自動車産業は日本経済を支える基幹産業であり、その成功は「ものづくり大国・日本」の象徴とされてきた。日本メーカーが海外市場で評価されることは国の誇りにつながりやすく、逆に批判を受けると「日本への攻撃」と捉えられることもある。

 特に、日本車の品質や技術力は長年にわたり世界的に高く評価されてきた。そのため、海外EVメーカーの台頭に対してナショナリズム的な反発が生じやすい。「日本車は世界一」という意識が根強く、EVや新たなモビリティの潮流が進むなかで「日本の自動車産業を守れ」という

「感情的な議論」

が起こりやすいのも特徴だ。もしトヨタが国際EV市場で先行していたなら、EV批判派の勢いはとっくに収束していただろう。

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