桜島フェリー「24時間運航」終了の衝撃! 90年続いたかつての“ドル箱路線”はなぜ赤字転落? 高速道路、火山、コロナ…地方交通崩壊の縮図か
鹿児島市と桜島を結ぶ桜島フェリーが、2025年10月に24時間運航を終了する決定を下した。9年連続の赤字と27億円を超える累積欠損が原因だ。フェリー経営の転機は、高速道路の開通や桜島の火山活動、コロナ禍など複合的な要因にあり、地方公共交通の厳しい現状を浮き彫りにしている。
観光依存から脱却する道

収益増のために、鹿児島市は観光客向けクルーズプランの開発や貨物輸送の割引制度を導入しているが、これらの取り組みだけでは抜本的な収益改善にはつながっていない。
また、鹿児島県の観光客数は、2019年の2120万340人から2023年には2062万1790人となり、コロナ禍前の水準に戻った。しかし、観光客数が回復しても、桜島フェリーの利用者は増加していない。これからも、観光客頼みでは桜島フェリーの赤字を補填できないことがわかる。
したがって、赤字脱却のためには、フェリーの主要利用者である桜島住民や大隅半島からの定期的な利用者を増やす施策が不可欠だ。
これまで鹿児島市では、赤字の補填方法として一時借入や、国の特別減収対策企業債を活用してしのいできた。こうした厳しい方法が選ばれる理由は、国から補助を得る手段がないからだ。
国内には、インフラ維持のために赤字でも運航されている航路が多数あるが、それが離島航路であれば、国の補助の対象となる。しかし、桜島フェリーは離島航路に該当しないため、補助を受けることができない。離島航路では特定地域住民を優遇する運賃設定が可能だが、桜島フェリーにはそれもできない。
このように、利用者減を防ぐための施策を充分に実施できないまま、船舶局の経営健全化団体入りを避けるために運賃値上げが行われ、さらに利用者が減少する負のスパイラルを招いている。桜島フェリーの経営難は、実に複雑な問題が積み重なった結果である。