桜島フェリー「24時間運航」終了の衝撃! 90年続いたかつての“ドル箱路線”はなぜ赤字転落? 高速道路、火山、コロナ…地方交通崩壊の縮図か

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鹿児島市と桜島を結ぶ桜島フェリーが、2025年10月に24時間運航を終了する決定を下した。9年連続の赤字と27億円を超える累積欠損が原因だ。フェリー経営の転機は、高速道路の開通や桜島の火山活動、コロナ禍など複合的な要因にあり、地方公共交通の厳しい現状を浮き彫りにしている。

桜島フェリー経営危機の背景

桜島フェリー(画像:写真AC)
桜島フェリー(画像:写真AC)

 鹿児島湾を挟んで、鹿児島市と大隅半島の諸地域を結ぶ幹線として、長らく黒字経営を続けていた桜島フェリーの転機は2014(平成26)年だった。

 この年、東九州自動車道と大隅縦貫道が、大隅半島の中心都市である鹿屋市まで延伸・開通し、鹿児島市と大隅半島が高速道路で直結されたことで、フェリーは大きな打撃を受けた。いわさきコーポレーション傘下の鹿児島交通が運営する鴨池・垂水フェリーも競合相手となっている。以前、筆者(昼間たかし、ルポライター)が利用者に聞いたところ、

「(鹿児島市側の)鴨池港は県庁の近くなので、運賃は高いが目的地によっては利便性も高い」

とのことだった。高速道路の開通により、それまでフェリーを利用していた多くの車両、特に物流トラックが陸路へと流れた。翌2015年度には車両航送台数が前年度比で15%も減少し、フェリー収益の約8割を占めていた車両航送収入が大きく落ち込んだ。鹿児島市が公表した統計によると、輸送量は次のように変化している。

●2013年
・旅客:367万5506人
・車両:152万6907台

●2018年
・旅客:341万0314人
・車両:130万1970台

●2022年
・旅客:236万7955人
・車両:101万1957台

この輸送量の減少により、桜島フェリーは2015年度から赤字に転落した。その後、船舶数の削減などさまざまな対応策が取られたが、赤字脱却には至らなかった。

 高速道路による収益減にさらに追い打ちをかけたのが、2015年8月の桜島の火山活動の活発化だった。噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられ、一時的に島民避難や観光客の激減が発生した。

 2018年にはNHK大河ドラマ『西郷どん』で鹿児島県が注目され、多少は持ち直したが、2020年からのコロナ禍が直撃。2020年・2021年の経常赤字額は各年度7億円規模にまで拡大し、収益構造は決定的に崩れた。

 このような外部環境の変化に加えて、運営体制の変化も桜島フェリーの経営に大きな影響を与えたと考えられる。

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