「市が潰れてしまう」 北陸新幹線“小浜・京都ルート”は八方塞がり? 鉄道・運輸機構に南丹市が「待った」…日本の原風景の行方どうなる
小浜・京都ルート暗雲

京都府南丹市が北陸新幹線小浜・京都ルートの工事に着手しないよう求める要望書を提出した。小浜・京都ルートの行方はいよいよ八方塞がりの様相を示し始めた。
京都府中央部に位置する南丹市。その東部で福井県と接する美山町は、三国岳、長老山など標高900m級の山々に囲まれ、アユの漁場として知られる美山川が流れる。川沿いに建つのは国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれたかやぶき民家の「美山かやぶきの里」。貴重な生態系を有する西日本屈指の天然林・芦生の森もある。
まさに日本の原風景ともいえる姿の美山町は人口約3500人。1960(昭和35)年までは1万人を超えていたが、今は半分以下に減少した。かつて11校あった小学校は統廃合を繰り返し、美山小学校だけに。それも児童数約110人の小規模校だ。子どもの数は1960年の10分の1以下になってしまった。
その一方で、65歳以上のお年寄りが全人口に占める割合を示す高齢化率は、市内で突出して高い。南丹市美山支所は
「2月1日現在の高齢化率は48%に達し、移住者が地域を支えている一面もある」
という。しかも、2040年には人口が3000人を割ると予測されている。
掘削土搬出用の斜坑設置も拒否

そんな美山町に北陸新幹線の小浜・京都ルートが通ることになって10年近くが過ぎた。ルートは福井県小浜市から美山町に入り、山岳トンネルで地下を南下して京都市へ向かう。住民は早くから各地で反対の声を上げ、環境アセスメントの実施に抵抗してきた。
それに追い打ちをかけるのが、南丹市が2月上旬、建設工事の事業主体となる鉄道建設・運輸施設整備支援機構に提出した要望書だ。住民から一定の理解を得られるまで建設工事に着手せず、市内に掘削土を搬出する斜坑を設置しないよう求めている。南丹市地域振興課は
「住民の理解を得るよう求めたわけで、延伸そのものに反対する要望ではない」
と説明するが、環境面や地元負担などに対する地元の懸念を伝えた京都府市と歩調を合わせ、事実上反対へ一歩踏み出したと受け止められている。