「地元として要望しているわけではない」 北陸新幹線延伸計画、京都市・松井市長が危惧! 説明会開催で府民の不安は解消されるのか、それとも着工へのアリバイ作りか?

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国が京都府での説明会開催を決めた北陸新幹線・小浜京都ルート。しかし、京都府・京都市は依然慎重姿勢を崩さず、財政負担や環境影響を懸念。地下水問題や建設残土処理を巡る専門家の指摘、市民の反対運動も収束の気配はない。さらに、石川県から米原ルート再考の声が高まるなか、計画の行方は混迷を深めている。2025年度の着工を断念する事態となった今、説明会は理解促進の場となるか、それとも計画の正当性を揺るがす火種となるのか。

国交省資料に虚偽内容が発覚

シールド工事で周辺の井戸に影響が出た中京区の市営地下鉄烏丸御池駅(画像:高田泰)
シールド工事で周辺の井戸に影響が出た中京区の市営地下鉄烏丸御池駅(画像:高田泰)

 府民の間では国交省が2024年夏の斉藤鉄夫前国交相時代から何度も記者会見で「地元に説明する」としながら、説明会が開催されなかったことへの不満がある。市民団体から再三、説明会を求める要望が国交省に出されたほか、西脇知事は記者会見で「開催を催促しないが、府民の懸念を解消してほしい」と繰り返し発言した。

 京都市では2024年10月に講演会が開かれ、国交省幹部が計画を説明したが、この会は自民党京都府連の主催。対象者も府内の保守系首長や自民党地方議員に限定された。京都府交通政策課は

「国交省が説明しても、あくまで政党の催し。国の説明会とは違う」

としている。

 国交省鉄道局はこれまで、国の説明会が開かれなかったことについて「整備委員会でさまざまな議論が続いていたこともあり、開催が遅れた。整備委員会と京都府市で意見がまとまった以上、丁寧な説明に努める」と述べた。

「与党の決定を国が追認する意思決定の形」

を疑問視する声もある。整備委員会やその上部組織となる与党プロジェクトチームは法律に基づく組織でなく、与党の私的な検討会にすぎない。

 国には鉄道施策を担当する国交省政務官を事務局長とし、国交省の政務三役で構成する整備新幹線問題検討会議、総務、国交、財務3省の政務官でつくる整備新幹線問題調整会議があるが、機能していない。反対住民の目には与党内だけで話が進む姿が密室協議のように映る。

 そして何より問題なのは国側の不誠実な対応だ。鉄道運輸機構は反対住民との交渉で回答を拒む場面が度々見られた。国交省が2024年10月に自民党京都府連に示した資料では、京都市営地下鉄東西線の地下トンネルをシールド工法で進めた二条(中京区)-太秦天神川(右京区)間で

「周辺井戸への影響がほとんどなく、補償件数ゼロ」

と記載している。

 しかし、京都市交通局が過去の資料を整理したところ、確かにこの区間で補償はなかったが、それより東のシールド工法区間で101か所の井戸に補償したことがわかった。都合の悪い質問に答えず、黒を白といいくるめる対応では府民の理解を得られまい。これまで通りの対応を続けると、説明会が小浜・京都ルートの“墓標”となりかねない。

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