能登半島地震「復興論vs移住論」 過疎化・経済停滞の今後どうすべき? 異能の官僚が語る「人間と環境は不可分」の意義
「異能の官僚」による指摘

2024年1月に発生した能登半島地震は、被災地に甚大な被害をもたらした。家屋の倒壊、ライフラインの寸断、地域経済の停滞――能登に根付く人々の生活は一変し、「復興よりも移住を本格的に検討すべきではないか」という議論も浮上している。
こうした議論に関連し、「異能の官僚」と称され、経済産業省の官僚として勤務しながら、評論家・思想家としても数多くの著書(『TPP亡国論』(2011年)など)を執筆している中野剛志氏が、儒学者・大場一央(かずお)氏とのYouTube対談で興味深い指摘をしている。
・江戸時代のエリートたちは、「武士が都市に集中しすぎるのは問題ではないか」と議論を行っていた。その姿勢には感銘を受ける。
・彼らの考えは、単なる貨幣や経済的利益の話ではなく、「人間は育った環境と切り離せない存在であり、人格と住んできた土地は密接に結びついている」というものだった。
・この考え方は今でも通用するどころか、人類の普遍的な真理といえる。だからこそ、「人を土地に根付かせるべきだ」という議論が行われていた。
・一方、現代の経済学的な発想はこれとは逆で、「住みやすい場所に移動すればいい」という考え方が主流になっている。
・例えば、能登の地震の際にも「そんな場所に住まず、移住を本格的に考えたらいい」と平然という人がいる。
・しかし、人間は環境と不可分な存在であり、その環境が壊れることは、自分自身の一部をもぎ取られるのと同じこと。
・本来なら、そういった視点まで含めて経済政策を考えるべきだが、江戸時代の儒学を学んだエリートたちはそれを理解していたのに対し、現代の人々はそうした視点を失っているように思う。
・こう考えると、人類は過去から退化しているのではないかと強く感じる。
果たして、この主張は現代においてどこまで妥当性を持つのか。本稿では、震災復興と移住の是非について、経済、交通インフラ、地域の持続可能性といった多角的な視点から再検討する。