物流不動産バブル崩壊? 空室率10%、賃料下落…2024年問題がもたらす過剰供給と拠点郊外化の理由とは

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物流不動産市場は、空室率上昇や賃料減少、金利上昇といったマクロ経済の影響を受け、成熟期に突入。しかし、「2024年問題」に象徴される業界の構造変化や労働力不足が新たな課題となり、市場は依然として変革の波に揺れ動いている。

物流不動産を巡る主要な懸念点

 まず、業界内でこれまで指摘されている主要な懸念材料を、一通り整理しておく。

 一点目は言うまでもなく、長期金利上昇である。日本の不動産市場の特性として、キャップレート(不動産に対する期待利回り)が低いこと、それに対して調達金利が著しく低いという点が指摘できる。特に海外投資家の場合には、円貨建てで調達した資金を日本国内の不動産で運用するという性質上、金利差(イールドギャップ)の変化は重要である。金利のイールドカーブコントロール撤廃(2024年3月)以降の長期金利の動向を占うことは困難だが、懸念材料であることには変わりない。

 二点目は建築コスト等の上昇である。周知のとおり近年、建築コスト(および設備の保守等のコスト)が著しく上昇しているが、これは投資対象としての不動産の期待利回りを圧迫する。これらコスト高には、人手不足による人件費高騰など、構造的に解消が見通せない要因が含まれる点も問題である。物流不動産に留まらない議論ではあるが、J-REITの決算データの分析により、賃料収入に占めるコストのうち、「資本的支出」の比率が長期的に増えているといった点も指摘されている(資料:ニッセイ基礎研究所・岩佐浩人氏「Jリートの不動産運用で問われる「インフレ対応力」」参照)。一方では逆に、世界的にインフレ基調が落ち着きつつあることから、建築コストのうち鋼材価格等の高騰は現在がピークで今後はある程度落ち着いて来るとの見方もできる。その場合には、現在ファンド等が保有している物流不動産が「高値づかみ」状態となる懸念もあるかも知れない。

 三点目は、荷主側の費用負担力の問題である。インフレで建築コストが上がった場合でも、その費用を最終的に負担する荷主などが、コスト上昇分の料金を支払えれば問題はない。しかし現実には賃料単価の上昇に倉庫料金等の上昇が追いついておらず、荷主側の値上げはなかなか進んでいない。日銀が公表している「企業向けサービス価格指数」の統計では各種倉庫サービスの価格が調査されているが、例えば「普通倉庫」のデータを見ると、2024年4月時点の価格水準は、2015年比で2%程度しか上がっていない。最近、トラック運賃の値上げに向けた動きが進んでいるが、ある意味では、倉庫料金はトラック運賃以上に価格が硬直的である。その背景として、例えばオフィス等の不動産と比べても、物流施設は付加価値の向上が難しいという課題もある。

 四点目は、物件の大量供給である。現在の物流不動産は、「マルチテナント型」と呼ばれる、複数の企業がフロアを区切って入居するような大型の施設が主流である。このタイプの物流施設の供給はほぼ右肩上がりで増加しており、特に2023年には過去最大の床面積が関東エリアに供給されている(資料:CBRE「首都圏LMTマーケット展望」など参照)。このような大量供給が短期的な需要を上回ったことが、空室率の上昇の直接的な要因だと考えられる。

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