羽田に縛られない! 関空拠点の「ジェイキャス」本当に成功できるか? 地域航空への変わらぬ不信感が試練に
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地域密着で築く独自の信頼

では、ジェイキャスが生き残るにはどうすればいいだろうか。採算問題を踏まえ、料金変動なしでも利用してくれる顧客層を具体的に描き出すことが必要だと思う。
そのためには、単にビジネス客や旅行客を移動させるだけでなく、「何のために移動するのか」を明確にしたマーケティング戦略が重要だ。例えば、ビジネス客なら
・研修に参加する人
・地方大学の学会に向かう人
・リスク分散のため交通手段を分ける必要がある団体(スポーツチームなど)
などが考えられる。旅行客の場合、
・冬に北陸のスキー場で定期的にスキーやスノーボードを楽しむ人
・社員旅行で温泉地を訪れる人
・旬のカニを求めて北陸や山陰に行く人
といった需要が想定される。
こうした個別の需要を掘り起こし、着実にファンを増やしていくことで、「ジェイキャスだから利用する」という顧客層を作り出すことができる。これがやがて安定的な売り上げにつながるだろう。
また、外国人旅行客を主なターゲットにしているようだが、「どの国から来た人で、日本で何をしたいのか」をさらに細分化し、自社路線に適した顧客層に対するマーケティングが必要だ。「日本で何をしたいのか」という具体的なニーズを把握することが特に重要だ。同社が目指す地域振興をビジネスに取り込むには、地域の魅力をターゲットに響く形で伝える能力が問われるだろう。
さらに、貨物輸送も収益源のひとつとして注目できる。関空にはフェデックスが北太平洋地区のハブを置き、24時間運用が可能な日本の貴重な空港として世界中の貨物航空会社が利用している。地方都市発着の貨物輸送を一部担うことで、旅客以外の安定収益を確保する可能性もある。ATR42の小型機では大量の貨物は運べないかもしれないが、「物流の2024年問題」から1年経過し、さらに深刻化する輸送力不足の一端を担うことで信頼を得られれば、それが旅客需要の増加にもつながるだろう。
ただし、世界最大級の航空市場を持つ米国ですら業界再編が進んでいる現状を踏まえると、地域航空会社がビジネスとして成立するのは簡単ではない。しかし、地域の課題にしっかりと向き合い、大手を上回る信頼を地方で築く地道な戦略があれば、いずれ収益は後からついてくるはずだと考える。
ジェイキャスが独立系航空会社として発展することを願っている。