東京からベンチが消えた! 「座れない街」急増中、効率的な再開発が庶民のオアシスを奪う
都市開発における「利益を生まない空間」の削減が進んでいるが、これによりベンチや休憩場所が不足している。最新技術やモビリティ向上に重点を置いた再開発では、地域社会のつながりや市民の交流の場が失われる恐れがあり、都市の質を向上させるためには静的な空間の確保が重要だ。
無料休憩場所不足が招く都市の矛盾

「東京では無料で座れる場所がない」
という嘆きが先日、SNSで注目を集めた。投稿者は、よく皇居のベンチに座ることを話題にし、「天皇陛下だけがおれを無料で座らせてくださる」と書き込んで、多くの共感を呼んだ
再開発やインバウンド需要の増加にともない、東京では休憩できる場所がますます不足している。2024年5月4日の『産経新聞』電子版では、
「好天に恵まれて汗ばむ陽気に一息つきたいと思っても、無料で休憩できる場所は意外なほど少ない」
と報じられた。実際、都心ではベンチが見当たらず、花壇の縁や壁に寄りかかって休む人々の姿が日常的に見られるようになっている。こうした状況に対し、SNSでは、都市空間で
「利益を生まない空間」
が減少し、法令で確保しなければならない公開空地や避難経路のみが残っていると指摘する声が上がっている。
再開発の本質的な問題は、この「利益を生まない空間」を認めない姿勢にある。開発業者は都市機能や住環境の改善を掲げる一方で、実際には空間の有効活用という名目で高層ビルを優先する。その過程で、
「都市機能や住環境の改善に直接関係のない要素」
が削られていく。その代表的な例が、自由に座り、休むことのできるベンチだ。この現象は、再開発が抱える本質的な矛盾を浮き彫りにしている。公共空間の質が、収益性の前に後回しにされ、ベンチのような市民の身近な居場所が商業施設や高層ビルに押し込められてしまうのだ。
これは単なる休憩場所の問題ではなく、誰もが使える公共空間をどう確保し、どのような街を作るべきかという根本的な問いを投げかけている。