カネか伝統か? 京都市が直面する「景観」と「経済」のジレンマ! タワマン、本当に必要? 高さ規制緩和で変わる街並みを考える
京都市は、規制緩和を進めることで経済活性化を目指す一方、歴史的景観の保護とのバランスが求められている。税収増加や若年層定住促進には、住宅供給自由化と地域内就業機会確保がカギとなるが、京都らしさを損なわず、持続可能な発展を実現するための慎重な対応が求められている。
人口流出と京都の財政難

厳しい規制に対して、都市活性化を求める声が高まり、規制緩和の必要性が次第に明らかになった。これを受け、京都市は2023年4月から都市計画の見直しを行い、一部の地域で高さ制限を大幅に緩和することを決定した。
具体的には、JR京都駅南側の大通り沿いでは、従来の20~25mから31mに高さ制限を引き上げ、外環状線沿いでは制限を撤廃。また、JR山科駅周辺の大通り沿いでは、1階を店舗にするなどの条件を満たすことで高さ制限を撤廃することとなった。さらに、南部の工業地域では、建物の容積率が400%から最大1000%に拡大されることになった。容積率とは、土地の面積に対して建物の総床面積がどれだけの割合を占めるかを示す指標だ。
景観政策の見直しに踏み切った背景には、京都市が抱える深刻な経済問題がある。規制によってマンションやオフィスの供給が制限され、若い世代を中心に人口流出が進んでいる。特に隣接する滋賀県大津市では、マンションの坪単価が
「京都市の半額程度」
と安価で、子育て世代に人気が集まっている。
もともと京都市は都市規模に比べて深刻な財政難に悩んでおり、その一因は人口構成にある。京都市には年間数千万人の観光客が訪れるが、住民税を支払うことはない。また、人口の約1割を占める学生も、住所を登録していないため住民税の課税対象にはならない。さらに、京都を代表する寺社仏閣は
「固定資産税の対象外」
となっており、観光や学問という京都市の特徴的な資源が、税収には必ずしも結びついていないのが現状だ。