バイクだけじゃない! ヤマハ発動機が「EV市場」に大挑戦する根本理由
四輪車と深いつながり

ヤマハ発動機は二輪車の開発で定評があるメーカーだが、創業当初からボート、船外機、スノーモービルなど、さまざまなモビリティ事業を展開してきた。しかし、一般的な四輪車事業にはこれまで参入しておらず、
・オフロードバギー
・レーシングカート
・ゴルフカート
など、一部の限定的な用途向け小型ビークルを開発してきた。
それでも、自動車向けエンジンの分野では存在感を示している。特にトヨタ自動車とのつながりが深い。トヨタが威信をかけて開発した「トヨタ 2000GT」は、実はトヨタとヤマハが共同開発した車で、エンジンや高級感のある内装の開発にヤマハの技術が活かされた。また、市販車の生産の大部分もヤマハ発動機が担っていた。2000GT誕生の裏にはヤマハ発動機の貢献が大きく、その後の自動車分野への関与を深めることとなった。
1980年代から1990年代にかけては、トヨタなどのエンジンチューニングや、F1をはじめとしたレーシングカー用エンジンの開発を行い、ヤマハ発動機のエンジン技術はスポーツカーやレーシングカーで磨かれてきた。
さらに近年では、トヨタの高級車ブランド・レクサスのスーパーカー「LFA」に、ヤマハ製のエンジンが搭載された。この4.8L V型10気筒エンジンは、LFA専用のエンジンとして圧倒的なパワーとトルクを提供し、国産スーパーカーとして最高の加速性能と最高速度を誇る車に仕上がった。また、そのエンジンサウンドは美しいと評価されており、
「ヤマハの楽器」
を連想させるような特徴を持っている。
こうした実績を背景に、ヤマハ発動機は2016年頃から四輪車事業への本格参入を検討していたが、2018年に技術的な問題や投資規模の大きさを理由に、正式に中止を発表した。それでも、レーシングカー分野への参入は続ける方針であり、今後はEVのフォーミュラレース「フォーミュラE」にも参戦する予定だ。