「V型エンジン」が高級車にめっきり採用されなくなった根本理由

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環境規制や消費者のニーズが変化したことで、V型エンジンは衰退の道をたどっている。トヨタをはじめ、国内外のメーカーは燃費効率の高い直列エンジンやハイブリッド、EVへのシフトを加速している。2032年には世界のEV市場が1.8兆ドルを超え、アジア太平洋地域が半数以上のシェアを占める見通しだ。複雑でコストのかかるV型エンジンが一般市場で復活する可能性は低いと考えられている。

V型エンジンの行方

ミニバンの6気筒エンジンルーム(画像:写真AC)
ミニバンの6気筒エンジンルーム(画像:写真AC)

 では今後、V型エンジンはどうなっていくのか。環境規制や消費者のニーズを考えると、V型エンジンが再び主流に戻る可能性はかなり低い。

 前述のように、世界的な環境規制の強化に加えて、燃費効率が悪いというV型エンジンのデメリットも影響していて、各メーカーはより環境に優しいエンジン技術や電動化技術の開発に力を入れている。

 また、消費者の好みも電動化に影響を与えている。多くの人が環境への意識を高めていて、特に若い世代は化石燃料を使う従来のエンジン車よりも、HVやEVを選ぶ傾向が強まっている。

 インドの調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイトによると、世界のEV市場規模は2024年には6714億7000万ドル、さらに2032年までに1兆8910億8000万ドル(約289兆円)に成長すると予測されている。予測期間中の年平均成長率は13.8%だ。2023年にはアジア太平洋地域が51.24%のシェアを獲得し、EV市場を独占している。

 また、コスト削減の面でもV型エンジンは厳しい状況だ。V型エンジンは構造が複雑で製造コストが高い。一方、直列エンジンや電動モーターはシンプルな設計で、コストを抑えやすい。自動車メーカーは競争が激しい市場で利益を確保するため、コスト削減のためにシンプルな設計のエンジンを採用する傾向が強まっている。

 こうした状況を踏まえると、V型エンジンが再び主流になる可能性はかなり低いだろう。自動車業界は環境規制とコスト競争のプレッシャーを受けて、電動化やハイブリッド化への移行を加速させている。将来的には、環境に優しい電動車が市場を支配し、V型エンジンは一部の高性能車や趣味性の高い車に限られるかもしれない。

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