青春18きっぷ“改悪”で失われる「豊かな旅」 ネットで不満大噴出、大幅ルール改変の裏にあるJRの狙いとは

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「青春18きっぷ」の利用条件が「連続使用」「1枚1人限定」に変わり、自由度が大幅に制限された。転売対策としての変更だが、正当な利用者にも不便を強いる形になっていて、学生や中高年層からの反発が高まっている。このままでは鉄道利用促進の妨げになる恐れもあり、SNSでは「改悪だ」という批判や署名活動も始まり、見直しを求める声が広がっている。

三セク乗車と省力化のはざま

旅情のイメージ(画像:写真AC)
旅情のイメージ(画像:写真AC)

 今回のルール変更の問題点を三つに分けて整理したい。

1.利用者とJRの「改善要望」が一致していない。
2.既存のユーザーのニーズを反映した変更になっていない。
3.実質的な「値上げ」を含む変更について、理由や狙いが十分に説明されていない。

 まず(1)について。青春18きっぷは自由度が高いとはいえ、実は近年は使いづらくなり、改善を求める声もあった。大きな理由のひとつが、整備新幹線の開業にともなう

「並行在来線の第3セクター鉄道化(JRからの経営分離)」

だ。北陸新幹線、東北新幹線、九州新幹線、北海道新幹線の開業にともない、並行する信越本線、北陸本線、東北本線、鹿児島本線、江差線がJRから地元の第3セクターに移管され、青春18きっぷの利用範囲から次々に除外されてきた。その総距離は

「800km」

を超える。一部では、三セク鉄道に囲まれ「飛び地」のように残されたJR区間に乗れるよう、三セク鉄道の通過を認めた区間もあるが、あくまで例外だ。

 こうした状況が進むにつれ、青春18きっぷユーザーからは

「多少値段が高くなってもいいから、並行在来線の三セク鉄道にも乗れるようにしてほしい」

といった声が上がっていた。JRと三セクの共同利用には例があり、JR東日本が発売する「週末パス」が挙げられる。関東甲信越から南東北にかけてのJRと14の鉄道に乗れるフリー乗車券である。

 JR以外の鉄道会社への運賃配分は明らかにされていないが、ある鉄道会社によると、1枚につき数円の売り上げが割り当てられるといわれる。正規の運賃に比べればわずかな額だが、その鉄道に乗らない人からも収入が得られることから、参画する会社にも十分メリットがあるという。こうした仕組みは青春18きっぷにも応用できるだろう。

 しかしながら、今回のルール変更においては、こうした課題には全く対処されていない。むしろ、

「JR側の省力化」

を進めることが主眼だったといえる。具体的には、自動改札の通過を可能にすることで、有人改札の負担を軽減することだ。これまで青春18きっぷの利用期間に、有人改札を通ろうとする客が行列し、混雑が課題となっていたことは事実だ。

 一方で、「一定の期間内から任意の5日を選ぶ」という利用方法は自動改札機になじまず、あらかじめ利用する日付と日数を決めておく必要が生じた。「連続3日」「連続5日」「複数人でなくひとり限定」の新ルールは、自動改札の機能に基づく。鉄道現場の人手不足もあり、有人改札の混雑解消のために青春18きっぷの自由度が犠牲になった形だ。

「(値段は上がっても)並行在来線の三セク鉄道に乗れるようにしてほしい」

というユーザーの要望と、駅などの現場の省力化を目指したいJR側の問題意識は、全く重ならなかった。商品開発・提供においては不幸なケースといえるだろう。

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