パナマ運河を通過する船はなぜ「3割」も減少したのか? 「水位低下」が引き起こす知られざる危機をご存じか

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パナマ運河の水位低下はエルニーニョ現象が原因で、2023年から世界貿易に深刻な影響を与えている。船舶の通航制限が発生し、通常は36隻のところ一時的に24隻にまで減少した。このため、物流の遅延やコストの増加が懸念されている。持続可能な水資源管理が求められ、気候変動対策が急務となっている。

エルニーニョとラニーニャ現象

 パナマ運河の水位低下に大きな影響を与えている要因のひとつは

「エルニーニョ現象」

だ。エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなる現象で、その状態が続くことを指す。これは、赤道上で東から西へ吹く貿易風が弱まることが原因となっている。

 通常、赤道付近で温められた海水は貿易風によって太平洋西側に流れている。しかし、貿易風が弱まると、温まった海水が太平洋東側に残り、エルニーニョ現象が発生する。逆に、貿易風が強い場合は、東側の温まった海水が西側に流れ、東側では冷水の湧き上がりが増えるため、海水温が下がる。この現象は

「ラニーニャ現象」

と呼ばれている。貿易風によって太平洋の東側と西側で海水温が変動することを

「南方振動」

と呼ぶが、貿易風の強弱の原因はまだ解明されていない。エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、世界各地の気候に大きな影響を及ぼしている。

 パナマ共和国は、エルニーニョ現象の影響を大きく受ける地域のひとつだ。エルニーニョ現象が発生すると、パナマ共和国を含む中米地域では乾燥が進み、通常の雨期であっても降水量が著しく減少する。その結果、ガトゥン湖やその他の水源の水位が下がり、パナマ運河で使用する水の供給が不足する事態に至る。

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