全固体電池の開発に成功! 中国の電池メーカー「鵬輝能源」は、EV市場のゲームチェンジャーになれるのか?
全固体電池が開く280Wh/kgの未来
最後に、鵬輝能源が2024年8月31日に自社ウェブサイトで公開した全固体電池に関する文章を紹介する。
●第1世代の全固体電池 ピンニングによる大幅なコスト削減
今回の会議で、鵬輝能源は第1世代の全固体電池(20Ah)の物理的構造や内部構造を公開した。同社が独自に開発した高イオン伝導性・高安定性・低コストの酸化物複合固体電解質によって、全固体電池のプロセスと材料の両面で画期的な進展があり、酸化物固体電解質の技術的な課題を解決した。
鵬輝能源は、この酸化物複合固体電解質を使って全固体電池を開発し、電池の安全性を高めるだけでなく、コストも大幅に削減した。安全性の向上とコストダウンが、鵬輝能源の第1世代全固体電池の最大の強みとなっている。
●独自の電解質湿式コーティングプロセス 全体のコストは従来のリチウム電池より約15%高くなる予想
鵬輝能源の第1世代固体電池技術は、電解質湿式コーティングプロセスの革新により、酸化物電解質の調製プロセスの課題を解決し、固体電池の工業化を大きく進めた。従来の酸化物電解質は、高温で緻密なセラミックに焼き固める必要があり、エネルギーを多く消費する上に効率が悪かった。また、セラミックのもろさから、大容量の電池セルの製造も難しかった。
しかし、鵬輝能源は独自の電解質湿式コーティングプロセスを使い、酸化物固体電解質の高温焼結を避けることに成功。さらに、セラミックのもろさを克服し、プロセスも大幅に簡素化した。この方法で製造した固体電池のコストは、従来のリチウム電池より約15%高いと予想されるが、今後3~5年でプロセスや材料をさらに最適化し、リチウム電池と同等のコストになる見通しだ。
●無機複合固体電解質 隔膜と電解質の交換
鵬輝能源が開発した第1世代の固体電池は、従来の隔膜と電解液の代わりに無機固体電解質を使っている。このことで、有機電解液の安全性の問題を排除し、次世代の高性能固体電池開発にさらなる可能性をもたらしている。
鵬輝能源は、新しい無機複合バインダーを使うことで、セラミックが持つもろさを改善し、電解質層の密着性と可塑性を高めることに成功している。これにより、固体電池の短絡のリスクを大幅に減らすことができた。また、機能性添加剤を加えることで、無機複合電解質層のイオン伝導性を向上させ、電池セルの内部抵抗を下げることにも成功している。さらに、高熱伝導性の機能性添加剤と安全性を高める添加剤を追加することで、固体電池の放熱性能と安全性も向上している。
鵬輝能源が独自に開発した無機複合固体電解質層は、ただの電解質ではない。
●針刺し試験に合格した真に安全な電池 煙も火も爆発もない
自社開発した複合固体電解質、高熱伝導性添加剤、そして自動安全機構により、第1世代の固体電池は最も厳しいピン刺し試験に合格した。ピン刺しを受けると、内部エネルギーの放出を迅速に抑制でき、極限状態でも固体電池のすべての構成要素が無傷であることを効果的に保証する。その結果、発生源からの危険を回避することが可能になる。
不燃性の固体電解質と「自動安全機構」を組み合わせることで、鵬輝能源は固体電池に求められる「本質的安全性」を真に実現した。
●-20度~-85度で安定した充放電が可能 広い温度範囲での使用可能
鵬輝能源の第1世代固体電池は、広い温度範囲で優れた性能を発揮する。-20度から-85度の温度環境で安定して充放電ができ、極限環境下でも正常に動作する。極寒から酷暑まで、さまざまな気候に適応できるため、宇宙船や屋外探査機器など、過酷な環境での作業に大きな意義がある。
広い温度範囲を持つ固体電池は、より安定したエネルギー出力を提供し、設備のメンテナンス頻度とコストを削減することができ、明らかな経済的利点をもたらす。
鵬輝能源の第1世代固体電池は、本質的な安全性を確保しつつ、エネルギー密度は280Wh/kgである。2025年には、シリコン系負極の割合が高まり、エネルギー密度が300Wh/kg以上に達する見込みだ。同社は2025年に試験的な研究開発と小規模生産を開始し、2026年には生産ラインと量産を正式に確立する予定である。固体電池の工業化に向けて、鵬輝能源は技術プロセスと支援設備に関する実務作業を推進している。
革新は電池産業の永遠の目的であり、電池産業が発展するたびに技術の進歩を目撃し、ユーザーに環境に優しいより良い生活を提供してきた。鵬輝エネルギーは「実用的な仕事は、海の中心、夢を構築する」という理念のもと、電池技術革新のためのあらゆる機会をつかみ、人々にとってより安全で効率的、持続可能な電池ソリューションを提供することにコミットしている。