EVは“酷暑”に弱すぎ? 気温38度で航続距離「3割低下」の現実、今後どうするのか
酷暑がEVに与える影響

近年の日本では、35度を超える猛暑日が1か月以上続くことが珍しくなくなってきた。こうした酷暑が電気自動車(EV)にどのような影響を与えるかは、重要な問題だ。
米調査会社リカレントが2024年6月に発表した調査結果によると、外気温が38度になると、EVの航続距離が
「約3割減少する」
ということがわかった。これは、
「エアコン」
の使用によるエネルギーの損失が主な原因だ。
日本のような環境では、EVの航続距離が短くなるのは避けられない。本稿では、酷暑がEVの航続距離に与える影響と、EVメーカーが直面している開発課題について詳しく解説する。
充電と予冷で距離延長

リカレントによる調査では、7500台のEVを対象に外気温と航続距離低下の関係を調べた。その結果、
・24度:0%
・27度:-2.8%
・29度:-3.5%
・32度:-5%
・35度:-15%
・38度:-31%
となり、35度以上になると航続距離が著しく低下することがわかった。主な原因は、外気温と車室内の
「温度差」
が大きくなるほど、エアコン使用によるエネルギー損失が増えるためだ。その結果、メーカーの公表値よりも実際の航続距離が短くなる傾向が見られる。
夏季は冬季よりも車室内と外気温との差が少ないが、例えば車室内を20度に保つ必要がある場合、冬季の外気温が-5度だと温度差は25度程度になる。一方、外気温が35度の場合、温度差は15度にとどまるが、夏季のエアコン使用によるエネルギー損失が大きく、航続距離に対する影響が増す。
酷暑のなかでEVの航続距離を伸ばす方法はいくつかある。まず、出発前にEVを充電器に接続したままにして、内部を予冷することが有効だ。これにより車室内が涼しい状態に保たれ、バッテリーからのエネルギー消費が減少し、無駄なエネルギー損失を避けることができる。
次に、バッテリーを満充電の状態にしておくことも重要だ。これにより、EVの熱管理(サーマルマネジメント)システムが余分なエネルギーを使わずにバッテリーを適切な温度に保つことができる。また、EVのバッテリーを充放電せずに炎天下に何週間も放置するのは、屋内に駐車するのと比べて航続距離に差が出ることがあるようだ。