EVは“酷暑”に弱すぎ? 気温38度で航続距離「3割低下」の現実、今後どうするのか

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外気温38度でEVの航続距離が約3割減少することが明らかになった。特にテスラのモデルは公表値の約60%にとどまることがわかった。EVの航続距離安定化には、高効率の熱管理システムが不可欠だ。

EVとガソリン車の熱管理差

EV(画像:写真AC)
EV(画像:写真AC)

 では、EVとガソリン車にはどのような違いがあるのだろうか。

 基本的に、走行中やアイドリング時のエネルギー使用量には大きな差はない。しかし、ガソリン車はエンジンから大量の廃熱を発生させるため、車内を涼しく保つためにエアコンの稼働率が高くなる。

 対照的に、EVはガソリン車ほど熱を発生させないため、エアコンの稼働率は低く抑えられる。また、EVは充電器に接続して予冷することができるため、車室内の冷却に必要なエネルギーも削減できる。

 さらに、ガソリン車はエアコンを安定させるために暖気運転を行い、エアコンプレッサーの動作が安定するまで待つ必要があるのに対し、EVは冷気をすぐに発生させることができる。このため、EVは熱管理システムの効率が高いといえる。

調査車種と結果

リカレントの調査リポートの一部でテスラ・モデル3の航続距離と公表値の差を示したグラフ(画像:リカレント)
リカレントの調査リポートの一部でテスラ・モデル3の航続距離と公表値の差を示したグラフ(画像:リカレント)

 今回の調査では、テスラを含む9車種について、外気温が実際の航続距離に与える影響を、実データを基に検証している。

 調査対象の9車種は、

・シボレー:ボルト
・現代自動車:コナ
・マスタング:マッハE
・日産:リーフ
・フォード:F150ライトニング
・テスラ:モデル3、モデルY、モデルS、モデルX

だった。

 これらのなかで、公表値を上回るパフォーマンスを示したのは

「コナ」

だけで、20~30%上回る結果となった(調査車両は8台)。他の車種も、

・ボルト(13台)
・マッハE(20台)

は26度前後の外気温で公表値を上回る性能を見せた。しかし、それ以外の車種は公表値を下回る結果が多かった。

 最も興味深かったのはテスラに関する調査結果である。テスラの各モデルについては、高効率のヒートポンプが搭載されているため、航続距離の低下は全温度域でほぼ一定に抑えられていたものの、いずれのモデルも公表値の

「約60%」

にとどまっていた。この結果は、テスラの公表値が本当に適正なのか疑問を投げかけるものだ。特に、モデル3は2540台のサンプルがあり、リカレントによる調査はデータの信頼性が高いと考えられる。

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