中小運送会社に問う あなたの「運賃交渉」は間違っていないか? 70%以上が値上げ成功の今、失敗者の学びが問われている

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「荷主が運賃値上げに応じてくれない」と嘆く運送会社がいる。確かに運賃交渉に応じてくれないふらちな荷主もいるのだが、一方でそもそも「運賃交渉の仕方」を勘違いしている運送会社もいる。

求められる「経営・営業のプロ」

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 運送業界は、従業員30人以下の中小運送会社が8割を占める、

「中小企業の集合体」

である。また、運送会社経営者はドライバー上がりで「運送のプロ」は多くとも、「経営のプロ」は少ない。あくまで一般論ではあるが、大企業と違い、中小企業だと、社内で経営や営業のノウハウを学ぶのは、なかなか厳しい。

 さらにいえば、営業に関しても、手近なところで仲間内の同業者から仕事をもらうことも多い。これが

「多重下請け構造の温床」

となっているのだが、結果として営業スキルも育たない。同業者から仕事をもらうときに、提案書を作り、きちんと営業して……などというプロセスはあまり必要とされないからだ。

 今は、物流の2024年問題や物流クライシスに対する危機感を追い風として、以前と比べれば、格段に運送会社が運賃値上げ交渉を行いやすい状況にある。にもかかわらず、運賃値上げ交渉がうまくいっていないとすれば、それは

「あなたは『運賃の値上げ交渉している』と思っているけれども、荷主側は交渉されたとは思っていない」、あるいは「そもそも交渉のやり方が間違っている」

可能性がないかどうか、胸に手を当てて考える必要があるだろう。

 ただし、それでもいまだに運賃値上げ交渉に応じない荷主は存在する。先の国土交通省の調査でも、5%が「交渉自体に応じてもらえなかった」と答えているし、実際、運賃交渉を望む運送会社に対して、なんだかんだと理由をつけて、面談を引き伸ばしている荷主を、筆者は知っている。ちなみにこの荷主は

「プライム市場(旧東証一部)に上場している大企業」

である。こういう荷主は、もはやトラックGメンや公正取引委員会に通報するべきだろう。だが同時に、運送会社側は、取引を解消する覚悟もしなければならない。取引を切るのか、それとも切られるのかは別として、こういったシーンでも求められるのは、「運送のプロ」ではなく

「経営・営業のプロ」

である。愚痴をいっていても、何も進まない。荷主との運賃交渉をせずに、健全な経営を実現できる運送会社など、まずいないからだ。

 まずはきちんとしたプロセスを経て、荷主と運賃交渉を行う。交渉に応じてくれないようであれば、公正取引委員会でも、トラックGメンでも、通報するしかないだろう。そのうえで、取引条件が改善されないのであれば、取引を解消し、新たな仕事を探す覚悟も必要だ。そこまで腹をくくらないと、結局、泣きを見るのは運送会社であり、

「従業員」

なのだ。

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