中小運送会社に問う あなたの「運賃交渉」は間違っていないか? 70%以上が値上げ成功の今、失敗者の学びが問われている
「荷主が運賃値上げに応じてくれない」と嘆く運送会社がいる。確かに運賃交渉に応じてくれないふらちな荷主もいるのだが、一方でそもそも「運賃交渉の仕方」を勘違いしている運送会社もいる。
運送会社に足りない交渉スキル
ここまで読んで、
「そういうものなの」
「ウチも同じだ」
と思った運送従事者がいたら、猛省してほしい。顧客との交渉ごと、ましてや値上げ交渉は、そんなに安直なものではない。
まず、運賃値上げのような、顧客との重大な交渉においては、口頭ではなく書面でその内容を提出すべきだ。当然、「○○円値上げしてください」というのであれば、その根拠は必要である。運賃値上げ交渉においては、大原則、運送原価を算出しておくことは大切である。
勘違いしないでほしいのだが、運送原価をバカ正直に荷主に伝える必要はない。
「現状の運賃だと、ドライバーには○○円程度の月給しか出せません。これで、ドライバーがやっていけるとお考えですか」
という風に、“間接的”に原価算出を行っていることを示せばよいのだ。
ちなみに、運賃原価をきちんと算出していないことは、わかる人にはわかるものである。わかりやすい例でいえば、先のA所長は、「一律○%の運賃値上げ」については信用していないという。いわく、
「運送という仕事の性質上、すべての運行ルートや輸送貨物の原価率が同じになるわけがない」
「一律○%の運賃値上げ」という運賃交渉については、後々、特定の運行ルートや貨物輸送について、さらに値上げを求められたり、あるいは撤退をにおわされたりすることもありうるだろう。
また、運賃値上げに即答はありえない。前述のとおり、(運賃に限らず)値上げを受け入れるためには、買い手(荷主)側も相応の社内手続きが必要となる。
2度3度と顧客のもとへ足を運び、場合によっては追加説明資料も提示する。値上げ交渉においては当たり前のことなのだが、これができない運送会社は、実は少なからずいるのだ。