「むしろ再配達が倍増する」 物流ジャーナリストの私が安易な「再配達有料化論」に警鐘を鳴らすワケ

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「再配達削減のため、再配達を有料化すべきだ」、再配達が一向に減らないことからこんな意見が出始めているが、筆者は反対である。むしろ、再配達の有料化は、再配達を倍増させる危険がある。

減らない再配達

宅配のイメージ(画像:写真AC)
宅配のイメージ(画像:写真AC)

 再配達が減らない。

 2015年、国土交通省による「宅配再配達による社会的損失は、年間約1.8億時間、約9万人分の労働力に相当する」という発表は、大きな驚きを持って広く報道され、「再配達を発生させることは、いけないことである」という世論の形成に大いに役立った。以降、再配達率は減っていったものの、コロナ禍後は下げ止まっている。

 2017年10月に15.5%だった再配達率は、新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年4月、8.5%まで下がった。しかし、緊急事態宣言が開けた同年10月には、11.4%に上昇。以降、11%台をずっと推移している。

 対して、2017年に約42億個だった宅配便取り扱い個数は、2023年にはついに50億個を突破した。単純計算すれば、この6年間で、再配達の個数は、

「1億個」

近く増えたことになる。しかも、先の宅配便取り扱い個数には、アマゾン、ヨドバシ・ドット・コム等の自社物流を行っている事業者の実績は含まれていない。

「物流の2024年問題」によって、ドライバーの残業時間が規制され、トラック輸送リソースが減るなか、再配達は、確実に

「BtoCトラック輸送(貨物軽自動車による配送を含む)」

にとって大きな問題となっている。

 政府もただ手をこまねいているわけではない。「再配達半減に向けた緊急対策事業」として、2023年度1次補正予算44億5000万円を投じ、再配達削減につながるような受取方法を選択した消費者に対するポイント還元、あるいは「ゆとりのある配送日時の指定」ができるようなシステム構築などを検証するための実証実験を実施している。

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