中小運送会社に問う あなたの「運賃交渉」は間違っていないか? 70%以上が値上げ成功の今、失敗者の学びが問われている
運送会社の要求と実態

10年ほど前、筆者は、あるメーカーの物流担当者(C部長とする)から相談を受けたことがある。いわく、「運送会社に代わって、原価計算を行いたい」というのだ。
「基本的には、私も運送会社からの運賃値上げ交渉には応えてあげたいんですよ。だけど、『運賃値上げしてください』と要望されて、『はい、どうぞ』とはいきません。ウチだって会社なんだから」とC部長はいう。
当たり前だろう。荷主の立場で運賃値上げを了承するとなれば、社内で稟議(りんぎ)書を回し、関係各部署に承認を取る必要がある。C部長のいうとおり、「会社なんだから」C部長の一存で運賃値上げを認めることなどできるわけがない。
一方で、運送会社からは、「運賃を値上げしてほしい」と要望されるだけである。ふと気になって、
「この運賃値上げを了承したら、あなたのところは大丈夫なんだよね」
と聞くと、「いや、実はこの値上げ幅だとまだまだ足りなくて」といい出したそうだ。C部長はぼやく。
「『えっ?、じゃあ、本当はいくら欲しいの』と聞くと、『現行運賃の2倍から3倍は欲しい……』とモゴモゴいい出すんですよ。2倍から3倍というあいまいなふっかけ方をしてくるって、もはやビジネスの交渉とは思えないですよ。その上、こちらが驚いて『あなたのところ、運送原価っていくらなの』と聞くと、やはりモゴモゴしているから、『本当は運送原価なんて算出していないんでしょ』と聞くと、『はい』と。こうなると、もう私の方で原価計算をして適正運賃を算出してあげるしかないじゃないですか」
C部長のことをお人よしと思う人もいるかもしれない。だが、似たような相談は、これまで筆者は何度か受けたことがある。つまり、ここまで運送会社のことを考える荷主側の担当者はまれだが、存在はしているということだ。
とはいえ、このような“上げ膳据え膳”状態を、運送会社側が当然と考え、荷主に求めるのは勘違いである。