旅客機「借りパク」問題だけじゃない! ウクライナ情勢が落ち着いても「航空業界」は前途多難すぎるワケ
ウクライナ情勢がコロナ禍の航空業界へさらなる打撃。事態が鎮静化しても前途多難。ロシア上空を避ける動きが活発化し、国際線は欠航し早期再開も見込めない。ロシアへの物流がほぼ全面ストップし、航空部品の提供も事実上止まっている。
「北回り」「南回り」ルートの復活

これまで、日本をはじめとする東アジア~ヨーロッパを結ぶ旅客便・貨物便は、ロシア上空を通過してノンストップで運航してきた。
ロシア上空を飛ぶノンストップ便では、航空会社はロシアに対し、いわゆる「シベリア上空通過料」を支払い、この料金は乗客が支払う運賃に上乗せされていた。それでもいち早く目的地にたどり着けるメリットは大きく、全日本空輸(ANA)やJALといった日系航空会社や欧州系エアラインも、ロシア上空を飛ぶ便を毎日多く運航してきた。
ところで、戦後の東西冷戦時は旧ソ連の上空が飛行禁止だったため、アメリカのアンカレッジを経由してヨーロッパへ向かう「北回りルート(ポーラールート)」と、中央アジアなどの上空を飛ぶ「南回りルート」が一般的だった。現在、この北回りルートと南回りルートが復活を見せている。
2022年3月現在、JALは唯一の欧州便である羽田 = ロンドン線のみを、アラスカ上空を通過する北回りルートで運航。一方、ANAは羽田 = フランクフルト線をウィーン経由で、成田 = ブリュッセル便を直行便として、いずれも中央アジアを通る南回りルートで運航する。日系航空会社による欧州便はこれだけしか運航されておらず、その便数はコロナ禍での減便後よりも少ない。
一方、欧州エアラインでは日本と欧州を結ぶ便は
・羽田 = フランクフルト線(ルフトハンザ・ドイツ航空)
・成田 = パリ線(エールフランス航空)
・成田 = ヘルシンキ線(フィンエアー)
などに限られ、北回りルートと南回りルートのいずれかで運航している。KLMオランダ航空は3月14日以降、ソウルを経由した欧州便を運航再開。ただ、他の欧州便に運航再開の動きはほぼ見られない。