「京急蒲タコハイ駅」看板撤去騒動、悪いのはどう見ても「京急」「サントリー」側だ! その理由を冷静に分析する

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京急蒲田駅の駅看板や装飾がネット上で炎上している「こだわり酒場のタコスハイ」コラボ。その深層を探る。

子育てと治安の矛盾

開高健『私の釣魚大全』(画像:文芸春秋)
開高健『私の釣魚大全』(画像:文芸春秋)

 区を挙げて子育て環境の整備に力を注ぐなか「タコハイ」の看板を掲げて、

「酔っぱらいが横行する街であることを想起させる」

のは、蒲田の治安をますます悪化させてしまうことになりかねない。子育て世帯の呼び込みを目指す現在の蒲田のまちづくりの方向性と、飲み屋街としてのイメージを前面に押し出す京急の企画は、明らかに矛盾しているのではないだろうか。かつて駅近くに十年以上住んでいたという40代男性も

「蒲田の飲み屋街は最高。何回飲んだくれたか覚えていない。でも、駅に持ち込む必要はない」

といっていた。そもそも、今回の騒動の根っこにあるのは、京急の「鉄道会社」としての誇りの問題ではないだろうか。安直な集客路線から脱却し、沿線の未来を見据えた真剣なまちづくりにかじを切ることが求められるだろう。

 犯罪が横行する街では、住民も来街者も幸せにはなれない。繁華街のネオンに目を奪われる前に、地域の安全と子育て環境の充実こそが急務だ。「選ばれるまち」を目指すなら、その第1歩は間違いなくそこにある。

「タコハイ」騒動は、公共空間としての駅のあり方を、改めて問い直すきっかけになったといえる。その上で「ヒトを惹きつける街」とは何か。100年後を見据えた、民間と行政の本気の議論が求められている。

 今回の件、非があるのは京急電鉄とサントリーであり、NPO法人の指摘は極めて真っ当なのである。そういえば、サントリーOBである昭和の大作家・開高健(1989年没)は著書『釣魚大全』のなかで、

「おだやかになることを学べ(STUDY TO BE QUIET)」

と書いていた。ネット炎上で“大騒ぎ”した人たちはこの一文をどう受け止めるのだろうか。

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