BYDはなぜ、新エネルギー車を「ガソリン車並み」の価格にできるのか?【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(16)
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部品費の削減と一体化

BYDが車両価格を大幅に下げることができた残り三つの理由だ。
●部品費の大幅削減
以前に、BYD SEALの分解調査に立ち会って気づいたことがある。BYDはブレードバッテリーのセル自体に強度を持たせてボディーの一部とするCTB(Cell to Body)構造を採用することで、空間利用率を向上させ、エネルギー密度の低さをカバーしている。そのため、ボディーのフロアパンの大部分が不要となり、コスト低減と軽量化を図っている。しかし、バッテリー自身がCTB構造により一体化するということは、分解が極めて難しい。開発側はリサイクル性を考慮しない方針としたのであろうか。ある意味、すごい割り切りである。
またBYD SEALではe-Axleとして「8 in 1」と呼ばれる8部品、
1.モーター
2.インバーター
3.T/M
4.DC-DCコンバーター
5.車載充電器
6.BMS
7.車両コントローラ
8.PDU
が一体化されていた。「秦 PLUS DM-i栄耀エディション」の開発思想も一体化であり、パワートレイン外観を見る限り、e-AxleもSEALに類似するよう一体化されている。おそらくシンプルなe-Axle「3 in 1」に比べて2~3割コスト低減されているであろう。またエンジン関連部品も別の一体化を図っており、2ブロックを合体させることで、コスト低減を図っているようだ。
●ソフトウエア開発スピードの迅速化と費用削減
BYDは、OTA(Over The Air)などのソフトウエアを自社で開発しているという特徴がある。テスラと同様に、多数のソフトウエアエンジニアを保有しているため実現できる。現在、自動車の機能や性能がソフトウエアによって決定されるSDV(Software Defined Vehicle)が主流となっているなか、他社に開発を委託することが多い日系自動車メーカーなどとは一線を画している。このような自社開発の取り組みは、開発スピードの迅速化、開発費用削減、製品の品質管理、独自性の確保、そして市場へ対応といった面で大きな利点をもたらしている。
●自動車メーカーの利益低減も許容
BYDの2023年の販売台数は302万台、純利益80%増の300億4100万元(約6300億円)、自動車および自動車関連製品の粗利率は23%で、米テスラの18%を上回ったようだ。これに対して、2024年は対前年比20%増の360万台販売が目標とのこと。今回の価格低下戦略にあたり、BYDは多少利益を減らすかもしれないが、台数増にてカバーしたいと表明している。おそらく、自社のみならず、販売店の値引きなどもあまり実施せず、自動車メーカー、販売店が一緒になって低価格競争を勝ち抜く意気込みではないだろうか。