BYDはなぜ、新エネルギー車を「ガソリン車並み」の価格にできるのか?【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(16)

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BYDは2024年2月、「ガソリン車より安い電気自動車」をスローガンに、新エネルギー車の低価格戦略を発表した。なぜBYDだけがこれほど車両価格を安くできるのか。

五つの理由

秦 PLUS DM-i栄耀エディション(画像:BYD)
秦 PLUS DM-i栄耀エディション(画像:BYD)

 BYDが車両価格を大幅に下げることができた五つの理由は、次のように考えられる。

●自社開発・製造のブレードバッテリーによりコスト低減
 製造コストのなかで、部品費は大きな割合を占め、そのなかでもバッテリーは最大である。BYDは「Blade Battery(ブレードバッテリー)」と呼ばれるリン酸鉄リチウムイオン電池(以下、LFP電池)を採用している。欧米の自動車メーカーが、ニッケル、マンガン、コバルトの三つの希少金属を主成分とする三元系(NMC)リチウムイオン電池を採用することが多いなかで、電池価格を抑え、かつ安全性を優先させるため、LFP電池に開発を絞っている。BYDは車両や電池容量は異なってもブレードバッテリーを採用し、2023年は300万台を超える大量生産によりコスト低減を図った。これはテスラ(北米と中国にてバッテリー仕様分離)始めどの自動車メーカーも及ばない点であろう。

 また、多くの自動車メーカーが、バッテリーを電池メーカーから購入するに対し、BYDは自社開発・製造することがコスト削減に大きな役割を果たしている。三元系を購入する自動車メーカーに比べ、バッテリー単価は半額以下になっているのではないだろうか。

●最廉価バージョンにて仕様割り切り
 コスト低減は車種のグレードにも表れている。「秦 PLUS DM-i栄耀エディション」は五つのグレードがあり、7万9800元の車種は最廉価グレードの「55km先行型」と呼ばれる。それ以外には、「55km超越型」が9万5800元、「120km先行型」が10万5800元、「120km超越型」が11万5800元、「120km卓越型」が12万5800元である。

 この最廉価車「55km先行型」は、装備仕様の面でかなり割り切った形となっている。特にEV走行の「NEDC走行距離」がグレードの名前についているとおり、「55km先行型」のバッテリー容量は8.3kWhである。「120km先行型」の18.3kWhに対して45%にとどまっている。充電は普通充電のみであり、急速充電仕様は装着されていない。ここでもバッテリー価格や急速充電の装備品を抑えている。

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