地獄化する京都の「観光公害」 地価高騰で子育て世代が続々流出、渦中の「宿泊税」は本当に抜本的対策になるのか?

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外国人観光客をターゲットにした新たな財源確保策として、さまざまな料金徴収方法が検討されている。そのなかで、多くの自治体が「宿泊税」の導入を選択している。その理由は何だろうか。

大阪府の外国人向け料金導入

京都市営バス(画像:写真AC)
京都市営バス(画像:写真AC)

 3月、大阪府の吉村洋文知事は、大阪・関西万博が開幕する2024年4月をめどに、外国人観光客向けの特別料金である「外国人料金」の導入を表明し、大きな注目を集めた。大阪府が検討しているのは、宿泊施設だけでなく、府内の観光施設などの利用に際しても、外国人向けの料金を設定するという画期的な取り組みだ。

 インバウンド需要が急激に回復するなか、全国各地の自治体では、外国人観光客をターゲットにした新たな財源確保策として、さまざまな方法での料金徴収が検討されている。なかでも、多くの自治体では

「宿泊税」

の導入が選択されている。その理由は何だろうか。

 いま、国はもちろん、多くの自治体が、経済回復の手段としてインバウンドに期待をしている。その一方で、観光ブームがもたらすプラス面とマイナス面も問題になりつつある。観光客の増加は、宿泊業や飲食業、小売業などの観光関連産業の売り上げ増加につながっているが、

・地価
・賃貸料

の高騰が他産業へ悪影響を及ぼしているとの指摘もある。

 これまでも、オーバーツーリズム(観光公害)に悩む世界の観光地では、観光客増加による弊害が問題となってきた。龍谷大学の阿部大輔氏の「オーバーツーリズムに悩む国際的観光都市」(『観光文化』240号)によると、

「ヴェネツィアでは、不動産価格が1平方メートルあたり4432ユーロ(約74万円)にまで跳ね上がり、旧市街の特に中心部では1.2万~2万ユーロと高騰。地元住民が住み続けることは容易ではない」

という。バルセロナでも「2014~2017年の3年間で住宅価格が35%上昇」し、

「特に旧市街やグラシアといった地区での上昇率が高く、住民の追い出しは日常茶飯事のように生じている」

と述べている。観光地化が進むにつれ、地元住民の生活に必要な商店が次々と閉店に追い込まれるケースも報告されている。

 日本でもオーバーツーリズムの弊害はコロナ以前より顕在化していた。とりわけ京都では、ゲストハウスの無秩序な増加やマナーの悪い観光客の急増が、たびたび報じられていた。規制緩和により外国人観光客が復活した現在は、より状況が悪化している。このため、

「子育て世代の滋賀県などへの流出」

が進んでいるという報道もある。また、若者が京都での就職を避ける傾向もある。その結果、残るのは外国人観光客とそれに関する産業のみになってしまうことも懸念されている。もはや観光公害というより

「観光地獄」

の方がふさわしいのかもしれない。飲食店の時給が2000円になるなど、インバウンド客の急増による人件費高騰が話題となっている北海道のニセコ町では、介護事業所が賃金競争に抗しきれず閉所に追い込まれた事例も報じられている。

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