「うちのドライバーは馬鹿ばかり」 中小社長の暴言から浮かび上がる、運送業界の構造的病理
「うちのドライバー、バカばっかりだからさ」──謙そんと言うには、あまりに露骨な言葉である。ある運送会社社長が発したこの言葉の背後には、運送業界が抱える大きな課題が隠れている。
運送業界に求められる経営者の意識改革
もう10年ほど前のことだ。
ある地方のトラック協会が原価計算をテーマにセミナーを行ったところ、前代未聞の大盛況だったことがあった。
「経営において、原価計算なんて基礎中の基礎なのに。皆さん、原価計算の方法をご存じないということなのでしょうね……」──セミナーを取材した業界紙記者は、皮肉交じりでこのようにぼやいていた。
残念ながら、これが今もなお運送業界の現実だと私は考えている。
「社長のところの4トントラックの原価はいくらですか?」──この問いに即答できる運送会社経営者のなんと少ないことか。
私が業界の会合で知り合った運送会社社長は、このように言い放っていた。
「うちの経営? もちろん儲かってるよ! だって、銀行口座にお金が残っているからね」
酒席での発言である。本気でないと信じたい。
別の運送会社から提出された運賃表を見た私は、相場よりもだいぶ安い運賃に懸念を抱いた。
「社長、だいぶお手頃な運賃ですが、大丈夫ですか?」
すると社長はこのように答えた。
「うちのトラックは、全車減価償却が終わっています。だからこの運賃で大丈夫ですよ」
どう考えても大丈夫ではない。永遠に走り続けることができるトラックなど存在しない。新車の購入プランを立て、運賃原価に算入しなければ、いずれこの運賃では仕事が続けられなくなる。経営そのものが破綻(はたん)しかねないレベルの、重大な過ちである。