白いロマンスカー「VSE」がわずか18年で引退を余儀なくされたワケ
技術的課題と新型車両導入への期待
2022年3月のVSE定期運行終了後の10月、ロマンスカーの停車駅としては初めてとなる、本厚木駅へのホームドアの設置工事が開始された。このホームドアは、一般車両とロマンスカーの両方のドア配置に対応できるよう、開口部が大きくなっている。VSEの定期運行終了後、初めてホームドアの設置が行われたという解釈は難しい。
既存のロマンスカー30000形「EXE」「EXEα」、60000形「MSE」のうち、4号車と7号車はホームドアに対応できないため、2022年11月以降、小田急線全駅でこの2両のホームドアは締め切り扱いとなった(最新型のロマンスカー70000形「GSE」ではドアの締め切りは行われない)。
おそらくこのような問題を防げたであろうロープ式ホーム柵が採用されなかった理由は不明だが、採用したくない何らかの要因があったと考えるのが自然だろう。
また、現在でも一部のドアが閉まっているとすれば、連接構造を持つVSEが存続していれば、ホームドアの設計がより困難になっていたことは間違いない。ホームドアが引退の直接の理由ではないとしても、VSEの引退によってホームドア設置にともなう「手間」がひとつ減ったことは間違いない。
・VSEの開発時に観光輸送向けの車両としてデザインや性能を突き詰めこと
・わずか20年足らずでメンテナンスの困難さを理由に引退させたこと
ともに、どちらも経営上の妥当性を欠いた判断とはいいがたい。しかし、VSEは正しい判断の結果、短命に終わった不運な車両だと感じざるを得ない。
VSEがロマンスカーの復権に貢献したことは間違いないが、それだけにロマンスカーの今後が気になる。通勤輸送に注力するのか、それともVSEのような観光輸送向けの新型車両が再び登場するのか、興味が尽きないところである。