高齢者に新車を勧めるのは良いことか? 自動車ディーラーが抱える「道徳的ジレンマ」、事故の懸念が頭をよぎる

キーワード :
,
自動車業界でいえば、高齢者にクルマを買ってもらわなければ企業の存続が危ぶまれるかもしれないが、それ自体はよいことなのか悪いことなのか。

ディーラーローンのメリット

自動車ディーラーのイメージ(画像:写真AC)
自動車ディーラーのイメージ(画像:写真AC)

 高齢者でも若者でも、数百万円のクルマをポンと現金で買うのは至難の業だ。そうなると、ローンを組んでクルマを買うことになるが、審査基準はあまり明確ではない。

 一般的なクルマのローンの審査では、ローン契約者の職業や年収、過去に支払い遅延などの事故がないかなどをチェックする。これらの内容に問題がなければ、契約できる。

 金融機関を含む銀行ローンの場合、審査には「年齢」の項目がある。完済までに借り手が生きている保証がないため、金融機関ではリスクが高いと考えられる高齢者に対して年齢制限を設けることがある。金融機関が扱うローンは基本的に無担保のため、資金が回収できないケースも考慮しているのだろう。

 一方、ディーラーローンには年齢制限がないことがほとんどだ。というのも、ディーラーローンはいわゆる「所有権留保」が担保となっており、ローンが完済されるまではディーラーがクルマの所有者となるからだ。

 つまり、支払いが遅れたり、契約者が死亡したりしても、ディーラーは担保車両を回収・転売することで資金を回収できるため、一定のリスクは甘んじて受け入れるというわけだ。

 さかのぼること8年ほど前、筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)がディーラーに勤務していた頃、年金暮らしの77歳の男性が5年払いでローンの審査に通ったことがある。当時と今では審査基準も変わっているかもしれないが、基本的には契約者の属性に問題がなければ審査に通る。契約時に

「支払い終わる前に死なないかな」

と冗談交じりにいっていたのが今でも脳裏に焼き付いているが、契約側が不安になるのは当然ともいえる。

全てのコメントを見る