「免許を返納しろ」 高齢ドライバーをネット上で攻撃しても、事故リスクはあまり減らないワケ
高齢ドライバーに「免許を返納せよ」と騒ぎ立てても、事故リスクはあまり下がらないかもしれない。いったいなぜか。
難しい一律規制

さらに機能低下の原因は加齢だけではない。同様の機能低下は、疲労や病気などでも起きる。従って、機能低下を全く許容しないのであれば、誰も運転できなくなってしまう。
しかし、それぞれの機能低下の
「許容範囲」
について十分な知見が出そろっているわけではないし、複数の機能低下の組み合わせは無限にあるので、「これ以上の機能低下が起きたらダメ」という線は引きにくい。
このように考えてみると、一律に何歳以上は「運転するな」とか「免許を返納せよ」とかいう議論は
「大ざっぱすぎる」
ことがわかる。
高齢でもまだまだ安全に運転できる人はいるし、比較的若くても、そろそろ運転をやめたほうがよい人もいるのだ。機能低下と運転の関係だけでも十分ややこしいのだが、運転には
「リスク補償」
という概念があるため、話はより複雑になる。
運転の難易度は自分で調整できる。同じ道を走るなら60kmで走るより30kmで走るほうが簡単だ。同様に車間距離をあけたり、夜間や雨天や混雑時の運転を避けたり、慣れない場所に行くのをやめたりすることで、運転の難しさを抑えることができるのだ。
この調整は、実は
「自家用車の特権」
でもある。飛行機は一定以上の速度が出ていなければ失速するし、船もかじが利かなくなる。鉄道には速度の下限はないが、ダイヤに従って走っているので勝手に速度を落とすことはできない。よって、要求されるタスクをこなせないほど機能低下してしまえば、安全に運転することはできなくなるのだ。
しかし自家用車は自由に難易度を下げることができる。だから、「自分は機能低下して危なくなっている」と思うなら、その分運転が簡単になるように調整すればよいのだ。これがリスク補償である。