米国テキサスの高速鉄道が「新幹線方式」を採用したワケ そもそも海外進出はなぜ難航したのか
海外展開の計画と今後の展望

テキサス高速鉄道の計画においても、新幹線の仕様が米国の安全基準に適合しない問題は当然ついて回った。米国の従来の安全基準では、鉄道の車両は衝突事故を前提として頑丈にする必要があった。一方で日本の新幹線の車両が、衝突を前提として作られていないことは、詳しく説明する必要はないだろう。
そこでテキサス・セントラル社は、テキサス高速鉄道のために新たな安全基準を作成することを、連邦鉄道局に申請した。連邦鉄道局は、日本の新幹線の安全性をおよそ3年間にわたって調査して、新幹線の安全性に問題はないと判断した。こうして日本の新幹線に準拠した新たな安全基準が制定されたが、この新たな基準には
「鉄道業界全般ではなく、テキサス高速鉄道限定で適用される」
というただし書きがある。
日本発の安全基準が、テキサス高速鉄道限定という条件で認められたのだ。米国において、輸入の対象を自国の基準に適合させるのではなく、基準の方を輸入対象に適合させることは、異例のことだ。ともあれ、こうしてテキサス高速鉄道は、日本の新幹線方式で建設できることが決定的となった。
テキサス高速鉄道はいまだ着工には至っておらず、現在予定されている
「2026年の開業」
は厳しいと思われるものの、用地買収を巡る裁判が決着するなど、着工に向けて着実に前進しているところである。
全米で旅客列車の運行に携わる公社のアムトラックが、テキサス高速鉄道計画に関心を示しており、テキサス・セントラルにとって強力なパートナーとなる可能性も見込まれている。
近い将来、日本の新幹線が米国の大地を走ることを大いに期待したい。「テキサス新幹線」が実現して成功を収めれば、テキサス州の経済が活性化するのみならず、日本で新幹線にかかわっている企業にも好影響を及ぼすはずだ。米国のほかのエリアでも新幹線方式を前提に、高速鉄道建設計画が推進されることになるかもしれない。
また、超大国である米国において、日本の新幹線の安全基準がほぼそのまま認められて高速鉄道が建設された実績は、米国以外の国への高速鉄道の輸出競争においても、大いに有利にはたらくであろう。
そして日本の鉄道関連企業が潤うことは、人口減少が確実な今後の日本の鉄道網を、将来にわたって維持していくことにもつながるのだ。