EV先進国スウェーデンが、世界初の「大規模ガソリン車走行禁止」に踏み切った理由

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スウェーデンの首都・ストックホルム市のラース・ストロムグレン交通担当副市長は、2025年から市中心部でのガソリン車とディーゼル車の乗り入れを禁止する計画を発表した。

EV移行を巡るEU加盟国の動向

ブリュッセルにあるEU本部(画像:写真AC)
ブリュッセルにあるEU本部(画像:写真AC)

 EV先進国であるスウェーデンの欧州連合(EU)内での位置づけを、EUおよびEU加盟国による規制の観点から検証してみよう。

 EUは2035年までにエンジン車の新車販売を禁止する予定だったが、2023年3月、再生可能エネルギーから生産された合成燃料を使用するエンジン車に限り、2035年以降の新車販売を認めると規制緩和に動いた。

 一方、欧州各国は自国のEVシフトに合わせた政策・規制を迫られており、各国の動向は次のとおりだ。

●ノルウェー
 ノルウェーは世界一のEV販売比率を背景に、2025年までにガソリン車販売を全廃する目標を掲げており、毎月の新車販売台数に占めるEV比率は70%超を維持する勢いだ。首都オスロの環境局は、2025年までに大型輸送車とトラックを対象としたゼロエミッションゾーンの導入を提案しており、2027年までにこれを自動車にも拡大する計画だ。

●英国
 最近、ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止時期が5年延期され、2035年となった。英国の新車販売に占めるEVの比率は20%前後で推移しており、EV販売が思うように伸びていないことが一因と見られている。さらに、自動車メーカーにとって厳しい「ZEVマンデート」と呼ばれる規制の導入がすでに発表されている。自動車メーカーは、EVやFCVなどの排ガスゼロ車(ZEV)を一定割合販売することを義務付けられ、目標を達成できなかった場合は、罰金を支払うか、他社から排出枠を購入することになる。この規制の下、英国政府は新車販売に占めるZEVの割合を2024年の22%から段階的に引き上げ、2035年までに100%にすることを義務付ける。事実上、ハイブリッド車(HV)の新車販売は不可能となる見込みで、EV先進国を目指す英国の姿勢が明確に打ち出されている。

●フランス
 首首都パリは2024年のオリンピック・パラリンピック開催に向けてディーゼル車の乗り入れを禁止しており、ガソリン車も2030年までに段階的に禁止される見通しだ。

 こうした規制で先行するスウェーデンは、環境大国を目指す同国のビジョンに沿ったEV政策を打ち出す一方、EU加盟国をけん制し、EV先進国としての

「主導的地位」

を維持する姿勢を強調している。

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