滋賀県の交通税検討 「乗らないのに負担かよ」の不満意見に、“公共”交通の価値伝えられるか

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滋賀県が全国で初めて導入を検討している「交通税」に注目が集まっている。交通税の目的は「公共交通の維持」である。滋賀県では、赤字の近江鉄道の維持が長年の課題だった。

公共交通の厳しい現状

近江鉄道(画像:写真AC)
近江鉄道(画像:写真AC)

 滋賀県が全国で初めて導入を検討している「交通税」に注目が集まっている。

 その旗振り役が同県の三日月大造県知事である。知事は一橋大学卒業後、JR西日本に勤務し、民主党政権では国土交通副大臣を務めた鉄道の専門家だ。知事は、公共交通を維持する手段として交通税のメリットを見いだしているが、物価高のなかで新たな負担をどう導入するか、実現には重大な岐路に立たされている。

 交通税の目的は「公共交通の維持」である。滋賀県では、赤字の近江鉄道の維持が長年の課題だった。近江鉄道は20年以上赤字経営で、老朽化した施設の更新負担のため滋賀県に支援を求めてきた。

 近江鉄道の状況を見ると、2017年度の営業収益は11.3億円に対し、営業費用は14.9億円で、3.5億円の営業赤字となっている。1994(平成6)年度からの24年間で40億円以上の赤字という深刻な状況だ。

 輸送人員も1967(昭和42)年の1126万人から2017年には479万人と、57%減少している。人件費や減価償却費の増加により、赤字額は増加の一途をたどっている。

 この問題に対処するため、滋賀県は2024年から上下分離方式を導入し、支援することを決定した。この支援により、近江鉄道は維持費の負担から解放される。しかし、その負担は県や沿線市町村に転嫁されることになる。

 このほか、滋賀県全体の公共交通の利用状況を見ると、路線バスの8割が赤字で、国が約3割を負担している。また、公共交通圏内の人口について、運行間隔別に見ると「20分に1本以上(1時間に3本)」の割合が約45%と低く、公共交通の利便性が低く、十分に活用されていない現状が浮き彫りになっている。こうした状況を抜本的に解決する財源として、交通税の導入が検討され始めているのだ。

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