ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?
日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。
都市発展にとって公共交通とは
都市発展にとって「公共交通」はどのような意義をもつのだろうか。それは単なる移動手段ではなく、住民を都市に引き付ける魅力的な装置であり、何よりも、脱工業化時代の知識社会にとって不可欠な基盤だといえる。
これは、筆者(諸富徹、経済学者)が2019年から3年間、座長として参加した日本都市センター内に設けられた「総合的な都市経営(エネルギー・交通等)のあり方研究会」の結論である。このたび、その成果を取りまとめた報告書が出版・公表されたので、ドイツの総合都市経営と公共交通の関係を中心に、そのエッセンスをお伝えしたい。
中心市街地がにぎやかなドイツ
ドイツでは1980年代より、次世代型路面電車(LRT)を中心とした公共交通の拡充で、都市の再活性化が図られてきた。戦後、ドイツも自動車中心のまちづくりを行ったため、自動車が街にあふれかえり、大気汚染、交通渋滞、交通事故などの社会問題が激化した。
都市の中心市街地の魅力は低下し、人々は居住地を郊外に移した。歴史的建築物の壁は排ガスですすけ、黒ずんでいた。もしそのまま放置されれば、ドイツも米国の都市と同様、中心がさらに荒廃・衰退する一方、富裕層や中間層が住む緑豊かな郊外に定着し、中心と郊外の分断が生じていただろう。
だが、ドイツはそうならなかった。同じ人口規模で比較すると、日本とドイツとでは、中心市街地の
「元気度・魅力」
がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっているのだ。どうして、こうも違うのか。