「パイロット不足」がこれだけ叫ばれているのに、簡単に増やせない根本理由
パイロット不足は日本だけではなく、米国では欠航を余儀なくされたケースもある。不足しているなら募集すればよいと考える人は多いだろう。しかし、現状はそんなにうまくはいかないのだ。
三つの理由

パイロットは現在不足しており、「2030年問題」としてメディアの注目を集めている。68歳で定年を迎える制度により、大半を占める60歳以上のパイロットの多くが2030年には定年を迎えるためだ。
この問題は日本だけではなく、米国ではすでにパイロット不足で欠航を余儀なくされた航空会社もある。不足しているとわかっているのなら、募集し、育てればよいと考える人は多いだろう。
しかし、現状はそんなにうまくはいかない。その理由は主に次の三つである。
・航空身体検査の基準が厳しく、適合人材が不足している
・免許取得までに複数の実技試験と筆記試験が必要である
・技術力や学力だけでなく、高度なコミュニケーションスキルが要求される
これらについて今回、詳しく解説する。
航空身体検査という関門

航空身体検査は、すべてのパイロットが満たさなければならない資格である。少なくとも年に1度、病院で検査を受け、適正とされる範囲に入らない項目がある場合、航空身体検査証明書は発行されない。
身体検査の内容は多岐にわたる。人間ドックや健康診断として行われるものもあれば、特殊な検査を含むものもある。例えば、色覚、視野、平衡感覚の検査などである。
普段は健康に暮らしていても、航空身体検査に適さない人も多い。航空身体検査には2種類あり、旅客機の操縦に必要な「第一種航空身体検査」は非常に厳しい。
現在、パイロットになるためには、四年制大学のパイロットコースを受講することがひとつの道であり、そのほとんどが入学試験の一環として身体検査を課している。入学前の身体検査で不適格と判断されれば、パイロットの訓練に入ることすら許されないのだ。