飛行機の「ペット輸送」に付きまとう死亡リスク 過去にはJALが訴訟沙汰、それでも継続の行く末とは

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たいていの動物にとって、長時間の輸送はストレスだ。しかしその状況も次第に改善され、ペットフレンドリーで快適な旅行が可能となりつつある。

ペット旅行のインフラ整った現在

ペットのイメージ(画像:写真AC)
ペットのイメージ(画像:写真AC)

 近年、ペットと一緒に旅行できるサービスは増加している。宿泊施設でもペット同伴で利用できるところが目立つようになった。それでも問題になるのは旅行のための移動手段だ。

 たいていの動物にとって、長時間の輸送はストレスだ。しかしその状況も次第に改善され、ペットフレンドリーで快適な旅行が可能となりつつある。

 犬や猫などと鉄道や飛行機を使って移動する場合、一般的にはケージに入れて輸送する。鉄道では手荷物切符を求められ、飛行機ではカウンターで預けて輸送する。

 鉄道の場合、飼い主がペットのそばから離れることはない。また、周囲に乗客が少なければケージを膝に抱えるくらいは許される。一方、飛行機ではそれすら叶わない。そもそも飼い主と離れて運ばれるからだ。

輸送中の死亡リスクも

JALのウェブサイト(画像:JAL)
JALのウェブサイト(画像:JAL)

 航空会社のペット輸送サービスは、消費者にとってなじみのあるサービスだ。JAL、ANAともに公式サイトで専用ページを設けている。

 JALのページを見ると、そこには、利用者自身が航空機に搭乗して、ペットも預ける場合は「手荷物」扱いに、ペットのみを輸送する場合は「貨物」扱いになると書かれている。また、預けられないペットとして、

・生後8週間(56日)以内の犬および猫
・ブルドッグ、フレンチブルドッグなどの短頭犬種
・カニクイ猿、アフリカミドリ猿、赤毛猿
・公的機関、もしくは個人所有を除く野鳥
・実験を目的とした犬・猿類
・条例や法令にて輸送が禁止されている動物
・輸送に適さない容器(クレート)に入れられた動物
・その他、弊社が指定する動物

とも。

 さて、ページのなかには「死亡事例について」という箇所もあり、次の文言が記載されている。

「昨夏にお客さまからお預かりしたペットが運送中に亡くなるという事案が発生いたしました。私どもはこれらの事案を厳粛に受け止め、ペットをより安全な環境で輸送し、安心してお預けいただけますよう、真摯に取り組みを進めてまいる所存でございます。なお、航空機による輸送環境はペットの健康状態にさまざまな影響を与える可能性がございますので、ペットをお預けの際は弊社Webサイトに記載の情報をご確認ください」

そして、過去5年間の死亡事例(貨物扱いとして輸送した事例も含む)の表が貼られている。もちろん年に1~3匹であり、ネガティブな情報をきちんと開示している同社の姿勢は評価できるが、万が一自分のペットが……と考えると不安になるのは筆者(柏木ハンナ、航空ウォッチャー)だけではないだろう。

 2021年8月、ある乗客がJAL国内線を利用した際に小型犬を預けたところ、故障による機体変更のトラブルもあり、熱中症で死亡したというトラブルがSNSで拡散されたこともある。

 飼い主にとってペットは家族の一員だが、法律上は「物」扱いだ。裁判では飼い主の精神的苦痛を勘案して慰謝料が認められる事例もあるが、あくまで賠償は物として行われる。ゆえに、飼い主としては納得がいかない結果になりがちだ。

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