物流ドライバーの“収入アップ”を阻む最大の敵 それは「運送会社の経営者」かもしれない
「トラックドライバーの収入アップを」という機運が高まっている。収入アップの妨げる悪者として名指しされがちなのは、荷主および親請けだが、実は運送会社経営者の課題も大きい。
相場とかけ離れた「標準的な運賃」
一方、運賃値上げ交渉を行う材料として、政府が2020年4月に発表した「標準的な運賃」を運輸支局に届け出ない、と答えた運送会社は2割に満たなかった。
誤解を恐れずざっくりといえば、運輸支局に届け出をする運賃表は、その運送会社の表看板としての運賃表となる。まず、ここを値上げせずに運賃交渉を行うのは筋道が違う。
また、「標準的な運賃」の「届け出をした」「これらか届ける予定」と答えた8割強の運送会社でも、「運賃交渉をした」+「これから交渉をする予定」という運送会社と、「交渉しない」+「交渉できない」とする運送会社は、ほぼ半々で拮抗(きっこう)している。
断っておくが、筆者は「標準的な運賃」については懐疑的である。発表当時の市況を考えると、あまりに相場感とかけ離れていたし、何しろ突拍子がなさすぎた。せめて、今のような値上げ是認の社会機運を高めてから発表するべきだったと今も考えている。
だがこのアンケート結果を見ると、8割以上の運送会社が「ウチの運賃は安い」と感じているにも関わらず、おおむね6割の運送会社が、運賃交渉をしていない(あるいは「しない」)可能性があるということになる。
これは、あくまで東京都内の運送会社を対象としたアンケートではあるが、他地域でも似たような結果になるだろう。実際、岐阜県トラック協会などが荷主に対して行った調査では、半数の荷主が、運送会社から運賃値上げ交渉や運送条件の見直しについて、相談を受けたことがないという調査結果が得られている。