物流ドライバーの“収入アップ”を阻む最大の敵 それは「運送会社の経営者」かもしれない
なぜ交渉を行わないのか
当然だが、このような状況にもかかわらず、運賃値上げを頑として受け入れない荷主企業も存在する。
地方のある運送会社社長は、
「ウチの荷主は中小企業ばかりだし、皆、原油やら原材料費の値上げで苦しんでいる。とても運賃値上げ交渉を切り出せる状況ではない」
と取材に答えてくれた。
だが、運賃値上げ交渉を行わない運送会社の大半は、次の理由ではないか。
・営業ノウハウや交渉ノウハウを運送会社経営者が備えていない(「運賃交渉の方法がわからない」「交渉を切り出した時点で取引を切られることが怖い」と考えている)
・輸送原価の把握に課題を抱えている(「いくら値上げをすれば良いのかがわからない」「値上げの根拠を荷主に対して示せない」など)
特に後者は、経営者としての資質にも直結する課題である。そして、輸送原価を把握していない経営者が計画的にドライバーの収入アップを実現できるわけがない。
例えば、先の第38回「運賃動向に関するアンケート調査結果」では、以下のような結果が出ている。
・燃料サーチャージを導入している運送会社は2割弱で、「導入したことがない」という運送会社が6割以上存在する。
・保有車両1台あたりの原価(輸送コスト)を全車両把握している運送会社は4割弱。「まったく把握していない」という運送会社も約15%存在する。
燃料サーチャージとは、トラックの燃料となる軽油等の市況価格に反映して収受される料金であり、運賃とは別に請求を立てることになる。
これについては、特に変動費となり予算化しにくいことから、以前は嫌がる荷主も多かった。しかし今では燃料サーチャージそのものに対する理解が広がったことや、荷主企業としても運賃値上げの根拠がわかりやすいことから、受け入れる荷主は増えている。
では、なぜ運送会社が燃料サーチャージを嫌がられていたかといえば、面倒くさいからである。運賃と別立てで算出する手間がかかることもあるが、そもそも運賃の内訳を把握していないことが大きい。いまさら、
「運賃のうち、燃料費だけを切り出して燃料サーチャージを算出してほしい」
といわれてもわからないのだ。