物流ドライバーの“収入アップ”を阻む最大の敵 それは「運送会社の経営者」かもしれない

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「トラックドライバーの収入アップを」という機運が高まっている。収入アップの妨げる悪者として名指しされがちなのは、荷主および親請けだが、実は運送会社経営者の課題も大きい。

運賃値上げ交渉に吹く追い風

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 ドライバーの収入アップを図るためには、まずその原資となる運送会社の売り上げと利益をアップさせなければならない。そして今、運送業界には、かつてないほどに運賃値上げ交渉が行いやすい状況が整えられていると、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は考えている。

「今、運賃値上げ交渉をしない運送会社は、正直なところどうかしていると感じますよ」

実際、筆者が取材した食品輸送をなりわいとするある運送会社社長は、このように発言している。

 運賃値上げ交渉が行いやすいという、主たる理由は三つである。

・世論の追い風:「物流の2024年問題」を筆頭とする物流クライシスを連日のように一般メディアが報道しているおかげで、運送業界の苦境が広く知られてきたこと。

・「物流革新に向けた政策パッケージ」の決定:「物流の担い手の賃金水準向上等に向けた適正運賃収受・価格転嫁円滑化等の取組み」に取り組むことを政府が正式に表明したこと。

・公正取引委員会による社名公表:2022年12月27日、公正取引委員会は、取引価格交渉協議に応じなかった企業として、佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13の企業と団体の名前を公表した。

 これは物流業界に限ったことではないのだが、13社のなかに物流企業が多く含まれていたことから、荷主企業、あるいは親請として多数の運送会社を協力会社として利用している物流企業に、

「価格交渉に応じないと社名公表されてしまう」

と、(良い意味での)警告となった。

 先日取材したある大手メーカーの物流担当者は、

「今、運送会社から運賃値上げ要請をされたら、荷主としては断れる状況にはない」

と断言した。

 さすがに、ここまで覚悟を決めた荷主企業はまだ少数だろう。だが、運賃値上げに対する追い風は今後しばらく強まることはあっても、弱まることはないだろう。

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