上下分離方式は窮地のJRを救えるか 「道路と対等な鉄道」を目指した欧州の政策とは

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コロナ禍で経営の苦しさに拍車がかかるJR北海道やJR四国に救済策はあるのか。鉄道の民営化で、地域によって事業者を分けるのではなく、インフラ管理と列車運行で事業者を分ける「上下分離」を採用したヨーロッパの状況を解説する。

列車で異なる運行会社 利用者はサービスや値段で選択

 貨物輸送は、EUの目論見通りに成長を続け、21世紀に入るとオープンアクセス法の施行により、民間事業者の参入も増加した。一方の旅客輸送に関しても、官民様々な旅客会社が参入を果たしているが、分社化によって都市間長距離輸送と都市近郊輸送を別の会社にしている国が多い。

 都市間輸送の特徴は、EUが目指した「輸送事業者間の競争促進」が実現しており、現在も各国で新規参入が相次いでいる。一部の国では、二つ以上の事業者が同じ都市間に運行され、利用客はサービスや値段を見て自由に事業者を選ぶことが可能となった。

 一方の都市近郊輸送に関しては、公共交通として確実に列車を運行するため、ドイツやフランスなどでは地方自治体が輸送計画を立て、競争入札によって選ばれた事業者が列車を運行する、いわゆるPSO契約(Public Service Obligation、公共サービス義務)が取り入れられている。

 PSO契約は、商業的に運営することは困難だが、社会的に必要とされるサービスを公的資金によって維持・提供するもので、両国以外にも、この方式を取り入れている事業者は多い。事業者は乗車人数や運賃収入に関係なく、一定額を地方自治体から得られるというもので、インフラ使用料も自治体がカバーする。事業者にとっては手を出しやすいサービス形態だが、事業者選択は入札方式なので、サービス面などでより良い条件を出した会社が選ばれることになる。

 コロナ禍による移動制限やリモートワークの定着によって利用客数が激減し、今やJRの本州3社ですら記録的な減収減益となった。助成金は、あくまで一時的な危機をしのぐための手段でしかなく、仮にコロナが収束へ向かったとしても通勤や出張が減り、コロナ前の水準まで戻る可能性は低いという試算もある。財源などの問題はあるが、鉄道インフラを道路などと同じ公共施設と位置付けた場合、両社それぞれからインフラを切り離して国や地方自治体が保有して、JRは列車の運行に専念する、また通学や通院など維持が必要な路線はPSO契約を採用する、といったことも今後検討されるべきだろう。

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