上下分離方式は窮地のJRを救えるか 「道路と対等な鉄道」を目指した欧州の政策とは

キーワード :
, , , , ,
コロナ禍で経営の苦しさに拍車がかかるJR北海道やJR四国に救済策はあるのか。鉄道の民営化で、地域によって事業者を分けるのではなく、インフラ管理と列車運行で事業者を分ける「上下分離」を採用したヨーロッパの状況を解説する。

欧州が上下分離で民営化を推進した背景

 ヨーロッパの中でもEU加盟国は、EUからの指令に基づき、各国有鉄道(国鉄)の民営化時に上下分離方式が採用された。多くの国で、インフラは国もしくは国が母体となる公営企業が保有し、維持・管理まで行う。1988年、スウェーデンが他国に先駆けて上下分離方式による民営化を実施し、この国鉄改革が成功を収めたことから、1990年代からこの手法を参考として加盟各国の民営化が進められた。

 EUが上下分離方式による民営化を推進した第一の理由は、モータリゼーション進展に伴い衰退していた鉄道輸送の再生であったが、その根底は環境問題に起因する鉄道貨物の競争力強化にあった。そのために必要だったことが、インフラと列車運行を切り離し、官民問わず自由に参入できる「オープンアクセス」の導入であった。

 それまで各国国鉄は国土を縄張りとして、旅客列車も貨物列車も国境で機関車や乗務員が交代していたが、この時間のロスが道路輸送に対する大きなハンディとなっていた。国境で機関車も乗務員も交代せず、そのまま直通できれば大幅な時間短縮となり、道路交通に対して競争力を保てる。

 スウェーデンの民営化は、鉄道と道路の基盤を同一条件に揃える「イコール・フッティング」の実現が上下分離導入の目的だったが、その後進められたEU域内における上下分離は、各国の鉄道ネットワークへ相互にアクセスできるシステムづくりが目的となっている点が異なる。

全てのコメントを見る