LRTで五合目まで疾走? 期待の「富士山登山鉄道構想」が地元でひんしゅく買っているワケ

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最近、富士山に関する報道が増加している。その理由は、世界文化遺産の登録から10年を迎えるタイミングと、山梨県が掲げる「富士山登山鉄道」構想にある。構想の深淵に迫る。

富士山の報道が増加しているワケ

LRTの走行イメージ(画像:山梨県)
LRTの走行イメージ(画像:山梨県)

 最近、富士山に関する報道が増加している。その理由は、世界文化遺産の登録から10年を迎えるタイミングと、山梨県が掲げる「富士山登山鉄道」構想にある。

 今、注目される登山鉄道構想は麓から5合目までを結ぶ約28kmの軌道上に次世代型路面電車(LRT)を走らせ、観光客の管理や環境負荷の低減を目指すものだ。

 しかし、一部の報道によれば、地元や観光関係者からは

「これ以上の手を入れてほしくない」

という反発の声が上がっているという。なぜこのようなことになっているのだろうか。そして、登山鉄道による観光客の管理とはどういうことなのか。

アクセスを鉄道に一本化

月別五合目来訪者数。2018年(画像:山梨県)
月別五合目来訪者数。2018年(画像:山梨県)

 まず、山梨県が進めている「富士登山鉄道構想」について解説しよう。2021年2月に策定された構想では、この鉄道を、世界遺産(2013年登録)である富士山の

・顕著な普遍的価値の保存
・適切な利用の推進

を行うための手段としている。

 構想はもともと、富士急行社長の堀内光一郎氏が会長を務める富士五湖観光連盟が2008(平成20)年に打ち出したものだ。過去、富士山ではケーブルカーなどが計画されたが、それとは全く異なる。

 具体的には、新しく山を切り開いて線路を敷設するのではなく、山梨県道路公社が運営する有料道路「富士スバルライン(富士山有料道路)」を利用するというのである。山梨県の資料には、こう記されている。

・軌道(線路)は富士スバルライン上に敷設し、道路の線形改良(拡幅等)は原則、行わない。
・山麓を起点とし、五合目までの約 25~28km の区間に路線を整備することを想定する
・軌道(線路)整備後はバス・タクシーを含む一般車両の通行は規制する。

 つまり、自動車を使った既存の富士山五合目までのアクセスを廃し、鉄道に一本化するというものだ。

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