零細バス会社を救え! 「軽井沢死亡事故」実刑判決に見る終わらぬ過当競争、再発防止のために順守すべき4つの条件とは
軽井沢スキーバス転落事故に判決

2016年に長野県軽井沢町で発生した前代未聞のスキーバス転落事故(15人死亡、26人重軽傷)について、長野地裁の判決が下った。運行バス会社「イーエスピー」の社長に禁錮3年、元運行管理者に禁錮4年が言い渡された。
運行管理者は国家資格であり、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、
・事業用自動車の運転者の乗務割の作成
・休憩/睡眠施設の保守管理
・運転者の指導監督
・点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等
・事業用自動車の運行の安全
を確保するための業務を行い、本来、経営と独立した立場にある。
被告に量刑の差が出たのは当然だろう。本件に関しては、社長の意向に同調する形で、慣れない大型バスを運転することに不安を示している運転者に対して、経営上の都合から運転を「押し付けた」ことが事故発生の重要な要因となっている。
中小零細企業を取り巻く厳しい現実

一方、厳しい経営状況に置かれている中小零細企業は、受注した仕事を
「無理にでもこなさなければ」
倒産する。そうなれば、運行管理者も職を失う。
国家資格があるなら、職を変えずに会社だけを変えればいいのではと思うかもしれないが、現在はどのバス会社も運転者不足で似たような状況であり、運行管理者としての境遇を大きく「改善」することは期待できない。被告も住み慣れた、生活に慣れた場所を離れて会社を変えるのは気が進まなかったのかもしれない。
こうした状況を改善するため、中小零細のバス会社をできるだけ経営統合して経営を安定させる対策が、国を中心に考えられてきた。
2000(平成12)年の改正道路運送法によって、貸し切りバス事業は需給調整規制が撤廃された。その結果、中小零細企業を含めた新規参入が相次ぎ、過当競争が発生。コスト削減が優先され、安全に対する配慮が軽視されてきた。
そこで、安定的な経営基盤を持たせ、安全対策も行わせるように、国は中小零細企業同士の合併、大手会社への吸収を促そうとした。ただ、現状においてこれを強制すると、競争の阻害となり、公正取引委員会のチェックを受けることになる。